試練を乗り越えた先で得たもの

 こうして数々の試練を乗り越えた大矢氏は、ニューヨークのヘッジファンド創業者とのアポなし面会を実現させ、国籍の異なる部下や同僚と円滑にコミュニケーションできるようになった。

 海外の人と交わることで、多くの学びや発見を得る。愉快なこともあれば、そうでないこともある。大矢氏は仕事でウクライナの支援に携わり、戦闘状態が続く現地へ二度訪れ、戦争の爪痕を目の当たりにした。

 最後に、大矢氏は読者にメッセージを送っている。

エイゴは、辛いよ、と言ってきたが、本当はエイゴ自体が辛いのではない。エイゴを使って、他の国のこと、他の国の人のことを知ろうとし、またはこちらの言いたいことを伝えようとし、壁にぶつかり、自分の至らなさを責める。そうした我慢の日々が続くと、辛いと思うのである。でも、多分、それは乗り越えられる。いっぱい勉強して、試練に耐えながらも心を込めてエイゴを話せば、突然、お互いに分かり合える瞬間が来る。それは至福の時である。自分にとっても、そして願わくば相手にとっても。

 本書は、ビジネスパーソン向けの英語学習書として実用的な内容を、自ら体験したエピソードを通してエッセイ風に伝えており、肩ひじ張らずに読める一冊だ。