「不安」「イライラ」「後ろ向き」など、押さえ込もうとしても湧き上がるネガティブな気持ちに悩んでいる人は多いのではないだろうか。のべ10万人を診察してきた精神科医の伊藤拓氏が著した『精神科医だけが知っているネガティブ感情の整理術』(ハーパーコリンズ・ジャパン)では、そんなネガティブ感情と上手く付き合っていくために、10タイプの思考のクセを知り、今からでも実践できる7つのステップで気持ちを切り替え・整える方法を解説している。
(東野 望:フリーライター)
ネガティブな感情はなぜ生まれてしまうのか
同書では、脳内物質などの働きや仕組みを解き明かしながら、精神科医ならではの視点から感情をコントロールしていく方法を紹介している。まずは、そもそもなぜネガティブな感情が生まれるのかから紐解いていく。
様々な状況に対してネガティブな感情が湧くのはごく自然なことだ。「驚き」「怖い」「悲しい」「嫌い」といった、自分の意志とは関係なく瞬時に生まれる感情は、とても原始的な反応である。人間は不安や不快を感じるからこそ、身を守るために備え、覚悟を持つことができるので、ネガティブ感情は私たちにとって必要なものでもあるのだ。
私たちの感情は、脳内の「扁桃体」がつくっているといわれている。通常は前頭前野がその感情をコントロールしているのだが、脳が疲弊してくると、扁桃体から分泌される脳内物質のバランスが乱れてネガティブな感情が多くなってしまう。
特に睡眠不足やストレスにさらされ続けたときや、精神を安定させるセロトニンが不足したときに脳の疲弊が起こる。
まずは自分の脳の中でどんなことが起きているかを把握することで、現状に対する対処方法も探しやすくなります。
このように、伊藤氏は脳内の仕組みと現状を知ることが感情を整理する第一歩だと説く。
ネガティブな感情に振り回されやすい人もいる
ネガティブ感情に振り回されやすいかどうかは、「本人の性格」と育ってきた「環境」によるところも大きい。承認欲求が強い人や自己肯定感が低い人ほど不安になりやすく、物事をネガティブに受け止めがちだという。
性格によっても物事の捉え方は大きく異なる。「何気ない一言に不安になる」「何をやっても悪い方向に動いている気がする」と考えがちならば、性格や「思考のクセ」についても把握していくことが必要になる。