バルニエ内閣は短命となる可能性大

 バルニエ首相は9月16日週にも組閣を行うが、新内閣は数週間以内に2025年度の予算案をまとめる必要がある。フランスは欧州連合(EU)から財政赤字の削減計画を含む中期の予算案の提出を求められており、25年度の予算案も緊縮型とする必要がある。どの政党も過半数に満たない宙吊り議会で、これをまとめるのは至難の業だ。

 国民議会(下院)の構成を確認すると、定数577議席に対し、ルネッサンス(159議席)と共和党(39議席)の議席を合わせても198議席。国民連合(142議席)の協力を仰ぐことができても、国民連合に自らを潰すために左派連合と協力したマクロン大統領に進んで協力する筋合いはなく、あくまで条件次第、是々非々での判断となる。

 一方で、第一会派である左派連合(180議席)の協力はまず望めない。中道左派かつ親EUの社会党はともかくとして、左派の「不服従のフランス」にとって、マクロン大統領の造反は許容しがたいはずだ。少数与党政権でも憲法上の特例規定に基づいて予算や法案を通すことは可能だが、それでは下院との軋轢が高まること必至である。

 そうなると、2カ月の政治空白の末に成立するバルニエ内閣もまた、短命で終わる可能性が意識される。この点、フランスの有権者は冷静にとらえているようで、先述のIfopの世論調査では、74%の人が議会で早々にバルニエ内閣の不信任案が可決されると回答している。仮にそうならなくても、フランスの政治不安は長期化の様相を呈している。