拭えない「フレンチショック」の再来

 議会の第一勢力である左派の「不服従のフランス」や第三勢力である右派の国民連合は歳出の拡大を求めている。「不服従のフランス」は富裕層増税に基づく歳出の拡大を、一方で国民連合は減税による景気の刺激を、それぞれ求めている。いずれにせよ、議会の両翼はバラマキを重視するため、フランス財政には拡大圧力が強まっている。

 一方で、フランスは現在、EUから財政赤字の是正を求められている。EUの要求に応じなければEUとの関係が悪化し、それを嫌気した投資家がフランスの債券や株式を手放すことになる。6月上旬に生じた「フレンチショック」(マクロン大統領による電撃的な議会の解散に伴って投資家による狼狽売りが生じたこと)の再来が警戒されるわけだ。

 フランスの金利が急騰した場合、欧州中銀(ECB)による安定化策の発動が期待される。具体的には、いわゆるTPI(伝達保護措置)とよばれるスキームや、パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)の再投資柔軟化がそれに当たる。しかし、ECBがフランス国債を購入するに当たっては、フランス自体が財政健全化に向けた姿勢を強く示す必要がある。

 要するに、自ら危機的な状況を招いた主体を救済するほど、ECBは寛容ではないということだ。すぐに救済してしまえば、それこそモラルハザードが生じるためである。

 金融市場による警告をある程度は受けさせないと、フランスの自助努力が見込めない。とはいえ、その匙加減を間違えると、金融不安の波は一気にグローバルに広がることになる。