筋金入りのBEVユーザーからも注目の的

 先進機能の中でも最重要項目のADASだが、これについてはまだまだ改善の余地が大きいように思えた。ドルフィンと違って認識機能はしっかり煮詰められており、車線や先行車、対向車の判定は非常に的確で勝手にブレーキがかかるようなことは一度もなかった。

 問題はステアリング介入。これもドルフィンのようにいきなりステアリングに大きな力がかかってびっくりするような感じではなかったのだが、ドライバーがクルマを狙ったラインにトレースさせようとするステアリング操作と車両側のレーンキープのためのステアリング修正が常にけんかしているような感じだった。少しの距離であれば気にならないが、旅行距離が積み重なると生理的に結構なストレスとして感じられるようになる。

 もう一点、これは大きな失点ではないが、ヘッドランプが単純なハイ/ロービーム自動切り換え機能しか持たない。照射能力自体はむしろ高い部類に属していたが、これだけ高性能でスポーティなフィールのセダンなのだから、先行車や対向車を避けて照射するアクティブハイビームやステアリングに連動して照射範囲を変えるアダプティブライティングが欲しいと思った。

ヘッドランプは照射能力自体は大変良好である半面、アクティブハイビーム、ステアリング連動配光などの高度な機能は欠いていた(筆者撮影)

 このように非常に魅力的な部分と残念な失点がないまぜになったシールAWDだが、4000kmドライブの中で興味深く思われたのはデザインのアイキャッチ性だった。

 筆者は過去に大小さまざまなクルマの長距離ロードテストを行ってきた。その中でもっとも多くの人から話しかけられたのはディスコンになったホンダのBEV「Honda e」だが、シールはそれに次ぐ声のかけられぶりだった。

 Honda eとの違いはクルマの正体を知らずに質問してきた人の比率が圧倒的に高かったこと。中国BYDの電気自動車と答えると、俳優・長澤まさみさんの「ありかも、BYD」の認知度は高く、「これがBYDでしたか」という反応が大半だった。声をかけたきっかけは全員デザイン。なかなかどうして大した吸引力である。

 話しかけてきた人の中で最初からBYDシールであると知っていたのは2人。ひとりは島根西部、益田の海岸で夕日をバックに写真を撮っていたとき。もうひとりは京都・福知山で充電をしていた時。前者はBEVのオーナーではないがBEVに強い関心があり、後者は日産「リーフ」だけで初代から7台買ったという筋金入りのBEVユーザーだった。

テストドライブ中、見知らぬ人からよく声をかけられた。デザインのアイキャッチ性はかなり高いというのが実感だった(筆者撮影)