理想に浮かれたエネルギー政策は転換されるか?

 脱原発政策を経て歪んだ電源構成に、現政権もしくは来年の総選挙を経て生まれる次期政権が切り込めるのかどうか。

 今や再生可能エネルギーに電源供給の半分以上を依存しているわけだが(図表④)、実は石炭・褐炭を通じた火力発電の比率は下げ止まり、やや浮揚も見られつつある。官民一体となって熱狂的にグリーン路線を追求してきたイメージのあるドイツだが、やはり背に腹は代えられぬという状況が透け始めている。

【図表④】

ドイツの電源構成ドイツの電源構成
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 対露・対中関係という外生的要因は不可抗力としても、理想に浮かれたエネルギー政策が転換するかどうかが「帰ってきた病人(sick man returns)」と揶揄されるようになったドイツの快復にとって何よりも大事な論点と考えるべきだろう。

 少なくともドイツにとって「永遠の割安通貨」であるはずのユーロが近年上昇していることを持ち出して、空洞化懸念を嘆くのは筋違いに過ぎる。

※寄稿はあくまで個人的見解であり、所属組織とは無関係です。また、2024年9月11日時点の分析です

唐鎌大輔(からかま・だいすけ)
みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト
2004年慶応義塾大学卒業後、日本貿易振興機構(JETRO)入構。日本経済研究センターを経て欧州委員会経済金融総局(ベルギー)に出向し、「EU経済見通し」の作成やユーロ導入10周年記念論文の執筆などに携わった。2008年10月から、みずほコーポレート銀行(現・みずほ銀行)で為替市場を中心とする経済・金融分析を担当。著書に『欧州リスク―日本化・円化・日銀化』(2014年、東洋経済新報社)、『ECB 欧州中央銀行:組織、戦略から銀行監督まで』(2017年、東洋経済新報社)、『「強い円」はどこへ行ったのか』(2022年、日経BP 日本経済新聞出版)。