企業がドイツから逃げ出す最大の理由

 ちなみに、NEERで史上最高値にあると言っても、対ドルでの購買力平価(PPP)は1.25~1.26付近にあり、これと比べれば現水準は▲10%以上も割安である(図表③)。

【図表③】

ユーロ/ドルの購買力平価と実勢相場の推移ユーロ/ドルの購買力平価と実勢相場の推移

 少なくともドイツが「高過ぎて困る」と感じるほどユーロ相場が暴騰しているとは思えず、これをもって産業空洞化の一因と論じることにはやはり違和感が大きい。

 そもそもドイツ輸出の4割前後は為替リスクのないユーロ圏に輸出されており、EUまで広げれば6割前後に達する。通貨高を理由にしてドイツ企業がコストをかけて国外脱出を検討するような状況は前提条件として想定されないはずである。

 なお、ドイツの場合は大量の移民受け入れの影響もあって人口減少の憂いもなく、東欧からの労働供給が見込める状況にある(国連推計によれば2100年までにドイツの人口が日本のそれを追い抜くことになっている)。

 産業空洞化に関し、日本の場合は語るべき論点が為替や人口動態などを中心として複数あるものの、ドイツの場合は何を置いてもエネルギー政策の問題がある。