- 深刻な不動産バブル崩壊が続く中国で8月下旬、新たな政策が打ち出されネット上で議論が沸騰している。
- 修繕などの資金を確保する目的とした「住宅年金」などだが、「事実上の固定資産税の導入ではないか」といった憶測が飛び交っている。
- 習近平は不動産市場の脱市場主義化を進めており、こうした政策も公的住宅制度を補強していくものとみられる。
(福島 香織:ジャーナリスト)
8月下旬に打ち出された住宅年金などの新たな政策について、ネット上で議論が沸騰している。これは住宅都市農村建設発展部(住宅建設部)が8月23の記者会見で打ち出したのだが、少なからぬネットユーザーが、事実上の固定資産税導入ではないか、あるいはまた庶民からなにがしかの名目で金を徴収するのか、と疑っている。
住宅建設部はすぐに公式サイトで、住宅年金は国民負担を増やすことなく政府が構築する基金を通じて支払われる、として国民からの直接的な資金徴収はない、と説明。だが、ではどこから資金を引っ張ってくるのかという疑問も湧いてくる。
住宅建設部の董建国副部長が8月23日の記者会見で説明したところによれば、中国全土の老朽化した住宅の維持管理について、「住宅健康診断、住宅年金、住宅保険制度の確立を研究しており、ライフサイクルを通じて住宅の安全を管理する長期的なメカニズムを構築しているところだ」と発言。現在、上海を含む22都市がこのプロジェクトを試験的に実施しているという。
集合住宅を購入した時に一定額支払われる管理費積み立てに相当する住宅特別維修(メンテナンス、修繕)基金はすでに社区レベルで導入されているが、今回の住宅年金は、政府があらたに公的資金によって開設するもののようだ。
近年、住宅倒壊事故が頻発しており、2022年4月29日に長沙住民が自分で建てたアパート住宅の倒壊事故が起きた後、住宅都市農村建設発展部は、既存住宅維持のための資金源の問題をよりよく解決するため、住宅年金制度の確立を研究していたという。
だが多くの地方政府は目下慢性的な財政難に陥っており、そうした制度の原資はどこからなのか、という話になっている。