財政難の地方で資金をどう確保するのか

 住宅建設部の説明では、「住宅年金用個人口座は、すでにある住宅特別維修基金(社区などの管理費積み立て基金)を利用して開設される」そうだ。また年金の主な財源は地方政府が調達するという。地方財政補助金、土地保険料、旧公営住宅の売却資金などを当てる、という。

 中国指数研究所の市場調査部長である陳文静は、住宅年金の資金として、一定割合は、土地譲渡金、交付金、維修基金の運用利益、財政助成金、付帯金融商品の創設のいずれかが、模索すべき重要な方向性であろうと指摘している。

 資金調達の仕方は地方によって違うようだが、たとえば湖北省では、土地譲渡金収入、住宅特別維修基金の運営による付加価値収入、社会的寄付を原資とする、と中国建設報(8月26日付)の取材に、湖北省住宅改革発展研究会会長が答えている。

 住宅特別維修基金とは2004年に導入されたシステムで、住宅特別維修資金管理弁法に従って、住宅購入者が購入価格の2~3%、2008年以降は平方メートルあたりの建設工事費用の5~8%を基準にして拠出した資金をプールしたものだ。この資金は、住宅の共用部分、共用設備などの補修のために使用されるもので、建設当初の設備保障期限が満期後の設備更新、改造などに使われることになっている。

中古不動産の修繕が課題に(写真:CFoto/アフロ)

 だが、この基金から資金を引き出して実際に住宅修繕に利用するのは手続きが非常に煩雑で、実際は使い勝手が非常に悪いという。

 上海不動産科学研究院が発表した論文「中国の住宅年金制度:背景と枠組み」によれば、この基金を利用するには、社区の管理委員会に申請する必要があるが、実際、小さな社区、小区には相当する管理委員会がないところも多く、基金利用の申請そのものができないこともあるようだ。また、管理委員会に申請しても、すぐに申請が通るわけではなく、社区の住宅所有者の3分の2以上が出席する会議で過半数が了承しないと、基金は利用できない。

 このため、基金の残高は全国で1兆元を超えており、特に上海、北京、杭州などの都市では数百億元以上の残高があるという。平均の累積利用率は10%程度にとどまっており、成都は4%程度、深圳は5%程度とさらに低い。基金の有効活用が進んでおらず、「修繕すべきところはすべて修繕する」という目標を達成できていないという。

 さらに、2007年には少なくとも8億元の住宅特別維修基金の資金が違法に株式市場に流されたと報じられたりして、資金の使途の不明さの問題もある。一方で、建設から5年たっておらず、基金の適用は本来できないはずなのに、デベロッパーが勝手にこの基金を利用してエレベーターなどを修理したような「ずる」をするケースもあるそうだ。