レカネマブとドナネマブの違いとは
──レカネマブとドナネマブの違いはどのようなところにあるのでしょうか。
伊東:いずれも、アミロイドをターゲットにした抗体医薬(※)であるという点では類似しています。
※病気の原因となっている物質を除去する抗体を人工的につくり、薬剤として体内に摂取して病気の原因を排除することで予防や治療をおこなう医薬品。
アミロイドには、段階を追って、一つのアミロイド分子、アミロイド分子が複数固まったもの、それが繊維状に連なったもの、さらにアミロイドがたくさん蓄積した「老人斑」と呼ばれるものがあります。
ドナネマブのターゲットは老人斑です。一方、レカネマブのターゲットは老人斑になる一歩手前、アミロイドが数個もしくは数十個固まったプロトフィブリルです。
──老人斑を除去するのと、プロトフィブリルを除去するのでは、薬の効果に違いが出るのでしょうか。
伊東:直接比較したデータがないのでまだわかりません。
最近では、老人斑よりもその一歩手前のプロトフィブリルのほうが脳の神経に対して高い毒性を有しているのではないか、という研究結果が多数報告されています。ただ、プロトフィブリルをターゲットにしたレカネマブのほうがよく効くのかどうかという点は、今後の研究により明らかとなると思います。
一つのアミロイド分子、アミロイド分子が複数固まったもの、プロトフィブリル、そして老人斑という一連の段階は平衡状態にあります。老人斑が減ればプロトフィブリルも減りますし、プロトフィブリルが減れば老人斑も減ります。どれをターゲットにしても、バランスよく脳内のアミロイドを減らすことができると考えられます。
──今後、アルツハイマー病治療薬としてどのような新薬が開発・承認されるのでしょうか。