警察とメディアはどのように情報を共有しているのだろうか。写真は警視庁(写真:show999/イメージマート)警察とメディアはどのように情報を共有しているのだろうか。写真は警視庁(写真:show999/イメージマート)

「メディアはどうやってこの情報を得たのだろう?」「これを書かれると警察も困るのではないか」など、テレビや新聞の事件報道を見ていると、さまざまな疑問が浮かぶ。

 はたしてどのように警察とメディアは情報を共有しているのか。そこにはどのような友情と葛藤があるのか。『三度のメシより事件が好きな元新聞記者が教える 事件報道の裏側』(東洋経済新報社)を上梓したフリーライターで元産経新聞記者の三枝玄太郎氏に聞いた。(聞き手:長野光、ビデオジャーナリスト)

──警察より早く容疑者を見つけてしまったという過去の出来事について書かれています。記者が警察より先に容疑者を見つけてしまうことなどあるのでしょうか?

三枝玄太郎氏(以下、三枝):普通はまずありません。警察は疑わしき人物の戸籍謄本も調べられるし、対象に対するさまざまな情報を役所から引き出して人となりを把握することができます。警察のほうが圧倒的に事件を調べやすいのは間違いありません。

 とはいえ、私はこれまでに3回、警察より先に犯人に到達したことがあります。いずれも警察が「被害者は自殺した」と判断したケースです。ただ、状況などを見ていくうちに「これは自殺じゃないな」と感じて、警察とは別に調査を続け犯人に行き着いた。

 3回とも犯人は被害者の近親者でした。警察はメディアが、被害者の近親者に接触することを嫌がります。「触られる」という言い方を警察はしますが、自分たちより先に何かを暴いてしまう可能性があるからです。

──警察が自殺だと考えているのに、自殺ではないと考えて調べ始めるというのはすごいですね。

三枝:推理が好きなのです。学生時代に医学部にいた友人に頼み、法医学の解剖の授業にもぐりこんだこともあったので、検死の知識も多少持ち合わせていました。そこで、事件の遺体の状況を聞いた時に、「自殺じゃないな」と直感するということがありました。

 たとえば、2000年3月に栃木県栗山村の湯西川温泉の辺りで、東京の女子高校生の遺体が見つかりました。死因は凍死で、当初警察は、遭難か自殺の可能性を想定していた。でも、凍死したのにすぐ近くに民家があった。そこに助けを求めなかったのはおかしい。

 凍死の場合、胃袋から胃粘膜出血点(ウィシュネフスキー斑)と呼ばれる出血が見られます。「そういうものはありましたか」と担当刑事に聞いたら、「自分は交通課が長かったので、そういうことは分からない」という返事が返ってきました。その時に「これはもしかすると事件性はないと即断してしまったのではないか」と思ったのです。

 そこで、近所で聞き込みをしてみたら、近くに住んでいた老婆が亡くなった女性を目撃していました。しかも男と一緒に歩いている姿を目撃していたのです。背中がゾゾっとなりました。結果的にその男が犯人でした。

──そういう時は、どうされるのですか?