明らかになった女子高生凍死事件の全体像

三枝:見つけた事実を書きました。とはいえ「捜査ミス」と書いて警察を批判するのも気が引けます。そこで、「消えた男の行方を追う」という書き方で記事を出したのです。

 その後、その事件を担当した捜査一課長が朝日新聞の記者と僕の悪口を言い合っているところに鉢合わせしてしまい、ケンカになりました。思わず「この男が犯人じゃないなら証明すればいい」「今からあんた(捜査一課長)がこの犯人捜してこいよ」と言ってしまいました(笑)。

 結局、この時は別件(轢き逃げ)で警視庁が犯人の男を逮捕しました。男が人を車で轢き逃げして相手を殺してしまったと思い込んで逃亡し、焦って自殺しようと決めて、交際していた女性と心中を図り、なんと自分だけが生き残ってしまった。これが事件の全体像でした。

──よく報道で「警察は容疑者の認否を明らかにしていません」という一文を目にします。本書でもこの点に触れていますが、これはどういう意味ですか?

三枝:「容疑者がまだ自分がやったと認めるとも、認めないとも言っていない」という意味です。昔はこういう表現を報道機関は使いませんでした。

 最近は、特殊詐欺などの組織犯罪が多くなってきました。こういう事件は犯人や関係者の数が多いので、逮捕した者がどこまで何を話したのかを言ってしまうと、後の捜査がうまくいかなくなる可能性があります。

「Aはしゃべった」「BとCとDはまだ否認している」などの情報を開示してしまうと、弁護士を含め、容疑者側の出方が変わってくる可能性がある。そこで「認否を明らかにしない」という言い方をすることで、相手を疑心暗鬼にさせているのです。

「認否を明らかにしていません」と警察が言っても、「夜回りで裏を取ってくるように」と僕は教育されてきましたけどね。

──しかし、それで本当に認否の内容をマスコミが知って報じたら、警察の捜査がやりにくくなる場合もあるのではないですか?