「戦狼外交」からの路線転換に不満?

④ NATOがアジアに迫ることへの対抗意識

 8月22日から、イタリア海軍の空母「カブール」が、横須賀基地に寄港している。グイード・クロセット伊国防相も来日中で、イタリア軍によるインド太平洋地域の防衛や、日本、イギリスとの次期戦闘機の共同開発などに、改めて意欲を示した。

 ウクライナ戦争が起こって以降、中国は「NATO(北大西洋条約機構)がアジアにやって来る」ことを、何よりも警戒している。その警告の意味で、今回、挑発を決行した。

⑤ 「戦狼外交」路線を引っ込めた習近平体制への不満

 最後は、中国国内での路線の違いからくる争いである。習近平政権と言えば、非友好国に対して狼のように吠えまくる「戦狼(せんろう)外交」で知られたが、昨今の経済失速に伴い、スマイル外交に転換を図っている。8月22日には、習近平主席が「鄧小平生誕120周年座談会」を主催し、鄧氏を「改革開放の総設計師」とほめ上げた。

 鄧小平氏はかつて、改革開放政策の「代償」として、人民解放軍を150万人も削減した。そのため、人民解放軍が習近平体制に警鐘を鳴らした。

 以上、5つの説を並べたが、いずれにしても日本が中国を警戒すべきは、尖閣諸島周辺だけではないことが、改めて浮き彫りになった一件だった。