確かなことは、疑問視される調査結果でさえ、県が「環境に優しい」と宣伝したことを裏付けできていないことだ。

 流水型ダムでも、豪雨となれば一時的に貯水され、水が引けば、湖内に流木や土砂が取り残される。

豪雨後の流水型ダム(2024年7月27日、阿部修氏撮影)。濁水が長期にわたり下流へと流れ続けることになる
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この先40年間、18.6億円かける計画、それでもアユは守れない

 県河川課は、「洪水発生後に速やかに対応している」と述べるが、清流を守る会が豪雨後、通行止めが解除されてすぐに見に行くと、流水型ダムの穴を覆う流木よけスクリーンに、流れてきた有機物が張り付いていた。水が抜けたダム湖内(冒頭写真)には泥が滞留したままだった。これが長期にわたって流れてアユの食む苔に付着してしまうのだ。人間の対応力には限界がある。

豪雨から2日後の今年7月27日に撮影されたダム湖(清流を守る会提供)
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 2021年に県が明らかにした「最上小国川流水型ダム長寿命化計画」によれば、ダムの維持管理に、2060年まで40年間で18.6億円(年間約5000万円)を費やす。ダムを維持管理してもアユが生きる環境は守れない。費用対効果はどうなのか、治水に必要な税金の使い道はこれでよいのか。40年以後はどうするのか。その問いは、計画当初の目的は何も知らない未来の山形県民に押し付けられることになる。

 山形県に流水型ダムへの公金支出の差止を求めた「最上小国川ダム住民訴訟原告団」に参加していた清流を守る会の佐久間憲生さんは、「アユはどうなるのか、私たちが主張したことは間違いではなかったと、いずれは証明される。調査活動を続けていく価値がある」と言葉に力を込めた。

「結果が出るまで、死ぬまで活動するしかないね(笑)」と冗談を交えて笑う「最上小国川の清流を守る会」の面々(2024年7月19日筆者撮影)
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