赤倉温泉を守り、「魚にも環境にも優しい」ダム計画のはずだったが……

 最初に訪れたのは、おとりアユを販売している下山久伍さんだ。下山さんは釣りが好きで、20年ほど前に「日本中を探して、ここが一番いいんじゃないかと思って」山形県最上町に移住。ところがその後、ダム計画が持ち上がった。

アユの生簀の蓋をあける下山さん(2024年7月19日筆者撮影)
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 それは、最上小国川のほとりの赤倉温泉(山形県最上町)を浸水被害から守るためのダム計画だった。赤倉温泉は、河原に湧く温泉の上に旅館ができた土地柄だ。今では、温泉旅館と飲食店が数軒ずつになってしまったが、昭和には栄えていた。1987(昭和62)年、当時の最上町長がダム建設を要望。建設のための調査が始まった1995年には、農業用水も目的とされていた。

 しかし、漁協からはアユ漁への影響を懸念する声が上がり、県内には自然保護団体「最上小国川の清流を守る会」(共同代表 川辺孝幸、草島進一、高桑順一)(以後、清流を守る会)ができ、ダムではなく河川改修による代替案を提案した。

 それに対し県は、河底をいじれば温泉に影響が出るとして、ダム建設にこだわった一方で、2001年、水を貯めない流水型にするから「魚にも環境に優しい」と宣伝し、2015年に建設を強行、88.3億円をかけて2020年に完成させた。

 山形県のホームページにある「最上小国川流水型ダム」についての説明にはこうある。

<流水型ダムは洪水調節専用のダムで、ダムの持つ様々な機能のうち洪水調節機能に特化した目的で建設されるものです>

<普段は水を貯めず、ダムのない河川と同様に水が流れるため水質が維持され、流水と同時に土砂も流れるので、「環境に優しいダム」と言われています>