動機があいまいな京大志願者を増やす指導
りゅうのすけ:京大の種を蒔くみたいな話があったんですけど、僕は、反対で。うちの学校も「行きたいところに行こう」と表では言いながら、何か京大を刷り込んでくるみたいな。
「いや、京大いい大学よ」みたいなことを、ばあっと言うんです。結局、京大志願者が増えるんですけど。でも、動機の部分が曖昧なまま京大を目指す「烏合の衆」が形成されてしまってて。
実際その弊害も、僕は目にしてて。京大理学部に合格した人がいたんですけど、いざ入ってみて、「何がしたかったんやろ?」ってなったらしくて、その子は結局、京大を中退して、別の大学の医学部に行ったんですけど。
岡邊:なるほど。自分、あるいは友達のケースで、そういう話、聞いたことある人いますか、他に。
あんな:私、京大の理学部、目指してたんですよ。私の高校も、あんま京大とかいないから、「京大、目指します」って言うだけでヨイショされる。「京大受けるんだ、頑張って」みたいな感じなんだけど、「何で理学部なの?」とか聞いてくれた先生は、いなくって。
それで、私、結果的に浪人して。浪人しても、教員になりたいし、「数学好きやから理学部行こう」って思ってたけど、「大学の理学部っていうのは違うよ」っていうのを、予備校の先生が初めて言ってくれて。
そこで、「私、数学の研究がしたいのか?」って一回立ち止まって、いや、それよりは「教育の研究がしたいな」と思って、教育学部を選んだけど……。
ほんとに高校では、サポートしてくれてるように見せかけて、実は、「ほんとにあなたはそこに行きたいの?」っていうところまで、深くは聞かれなかった。
岡邊:学校側としては、進学実績を伸ばしたいっていう気持ちは、分からないでもないです。ただ、生徒側には、実績偏重の姿勢がネガティブに捉えられることもあるのですね。
「学歴はあなたを守ってくれる」“東大洗脳”の意義
ちなつ:私の学校は、中高一貫で、中3から「東大洗脳」が始まるっていう。
岡邊:前にも、話題に出てきましたね。
ちなつ:うちの学年団の先生が、そういう感じだったんですけど、なんか、とりあえず東大。私立なら、じゃあ早慶ね、と。そういう感じの指導で。
東大東大って言うのは、どう考えてもやり過ぎだとは思うんですけど。私も、進学実績のためなんだろうなっていうのは感じていて。
ただ、先生が「今の時代は学歴重視で、すぐそれが変わることもないだろうし、生きていくなら学歴は絶対、あなたを守ってくれるものだよ」って言ってくれたの、すごい覚えていて。進学実績も考えてたと思うけど、私たちのことも考えてくれてたんだなっていうのは、感じました。
岡邊:ちなつさん、班のディスカッションで言ってた、東大を目指してたお友達の話、ちょっと紹介してくれます?
ちなつ:東大洗脳で、「東大受けようかな」っていう感じで、ある人が東大を受けたんですけど、結局受からなくて。早慶も受からなくて。だったら、やっぱり最初っから、私立に絞って対策をして、早慶、受けとけば良かったな、みたいな友達がいました。
岡邊:進学実績が重んじられすぎていることの副作用ですね。うまくいかなかった場合のケアが、あまり考えられていない感じがありますね。その辺まで考えると、学校での進路指導って、難しい。
さて、ここまで、京大を勧められたような、ある種、特殊な環境にいた皆さんの、進路指導の経験を聞いてきましたけど、学校の先生の担う責任は、結構重大だっていうこと、確認できたんじゃないかと思います。
大学に行かない選択、就職する選択も含めて、いろんな進路選択がありますが、学校の先生の将来を方向付ける役割っていうのは、決して小さいもんじゃないということ、分かってもらえたんじゃないかと思います。