パリオリンピックは8月11日(日本時間12日午前4時)に閉幕し、7月24日の競技開始から19日間の熱戦を終えた。日本勢の金メダル数は20個となり、海外で開催された五輪では2004年アテネ大会の16個を上回って過去最多となった。
今大会の世界3位となった金メダルの内訳は伝統的な競技のほか、スケートボードが東京五輪に続いて獲得したほか、新種目のブレイキンも加わった。こうした競技は、従来の五輪競技とは特性や雰囲気も全く異なるが、メディアの報道姿勢は、それぞれの選手が背負う重圧や乗り越えた挫折、苦悩など「事前取材」の内容を吐き出すスタイルから大きな変化がなかった。
(田中 充:尚美学園大学スポーツマネジメント学部准教授)
>>女子やり投げ金メダルの北口榛花選手「カステラもぐもぐ」写真など
これまでの過去最多記録だったアテネ五輪の金16個の内訳は、最多が柔道の8個で、水泳の3個が続き、陸上とレスリングが2個ずつ、体操が1個だった。
それを上回るパリ五輪の金メダル20個の内訳は、レスリングが男女合わせて8個と最多で大躍進を遂げた。そして柔道と体操が3個ずつで続いた。さらには、20年前にはなかった顔ぶれで、東京五輪から実施されたスケートボードと、今大会で飛躍したフェンシングが2個ずつ、陸上と新種目のブレイキンが1個ずつだった。
「お家芸」とも言われる日本の伝統競技と、メディアが取材の重点を置く競技は合致する。各社の五輪取材の中心を担う記者はほとんどが、柔道やレスリング、体操、水泳、陸上といったメダル獲得の可能性が継続的に高い競技を受け持つからだ。その一方で、新種目は若い記者が担当することが多い。
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共通しているのは、どんな競技でも担当する記者は、何年も前から選手や関係者への取材を積み重ねることだ。「事前取材」の大半は、選手がメダルを獲得したときの記事の材料(ネタ)集めである。
五輪などでメダル獲得時に掲載されるメインのストーリー記事には、長らく日本のスポーツ報道の世界で受け継がれてきた「型」が存在する。
大きく4つの段落に分けたとき、冒頭の第1段落では表彰式の様子か、メダルを獲得したシーンの情景描写から書き始める。本人の試合後の感想やコメントも入れる。
第2段落で、実際の試合の状況を振り返るとともに、勝敗を分けたポイントなどをわかりやすく伝える。
第3段落では、選手が五輪にたどり着くまでの挫折や苦難、さらには逆境をどう乗り越えたかを明かす。この部分が記事の「肝」とされ、家族や恩師との絆や、けがなどのアクシデント、ライバルの存在などをクローズアップする。
第4段落では、メダルがもたらした意義や、今後の目標や展望などで締める。
実際には第3段落は五輪の開幕前に「予定稿」として書き終えていることが多い。この段落で、いかに他社の記者が知らない「肝」となるエピソードを仕込めているかが、記者の評価を大きく左右する。