その1:米国の景気減速懸念

 史上最大となった東京株式市場の大暴落については、いくつかの要因が指摘されています。

 第1は、米国の景気減速に対する懸念が広がったことです。

 米国では最近、景気の減速を示す経済指標が相次いで公表されています。全米供給管理協会(ISM)が8月1日に発表した7月の「製造業・景況感指数」は、前月比0.3ポイント減の46.8。市場の予測を下回る数字にとどまりました。翌2日に発表された7月の雇用統計では、失業率が0.2ポイント増の4.3%となり、およそ3年半ぶりの高い水準になりました。

 米国には、サーム・ルールと呼ばれる指標があります。雇用統計の推移などが一定の水準に達した際に発せられるもので、景気後退入りを告げる「警告」として機能してきました。リアルタイムでこのルールを監視・表示しているセントルイス連邦準備銀行は8月2日、4年ぶりにこれを「点灯」させました。

 1950年代以降、サーム・ルールは計12回発動されていますが、過去に景気後退にならなかったのは1回だけ。いわば、不吉な警告でもあるのです。

 こうした事態を受け、米ニューヨークの株式市場では、金融やITなどの銘柄を軸に売りが殺到。8月5日までの3営業日で2100ドルあまりも暴落しました。東京市場の大暴落もこれに連動したものと言えます。

 2番目の理由は、7月31日に行われた日本銀行の利上げです。この日の金融政策決定会合で、日銀はそれまで年0〜0.1%程度だった政策金利を年0.25%程度に引き上げることを決定しました。