(英フィナンシャル・タイムズ紙 2024年8月6日付)

1日で4451円も値を下げた日経平均(8月5日、写真:つのだよしお/アフロ)

 ほんの数カ月前、東京のディーリングルームはお祝いモードに入っていた。

 巨大スクリーンに映し出される数字がかつては二度と届かないと思われた1989年の史上最高値を抜き去るところを見るために、普段は外部に閉ざされている部屋にジャーナリストを招き入れたほどだ。

 日本は復活した――あるいは、そう思えた。

 だが、今度こそは日本が持続的な回復を遂げる兆しが見られるにもかかわらず、もしかしたら今回も結局、そう違わなかったのかもしれない。

急転直下の株価暴落

 週明けの5日に市場が開いてから20分も経たないうちに、東証株価指数(TOPIX)がすでに7%下げ、円相場がまだ対ドルで上昇している段階で、あるトレーディング部門のトップは状況を説明することに最善を尽くした。

 「これといった実際の金融危機がないのに、東京市場は世界金融危機の時と同じように動いている」と語った。

「だが、この手のことは以前も見たことがある。日本は投資の世界がリスクを罰するためにやって来る場所だ」

 日本の相場調整のスピードと激しさには目を見張るものがあり、最近ルネサンス(再生)を経験してきた市場に対する見方を完全にリセットする可能性がある。

 痛烈な要因の組み合わせ――米国の景気後退への不安、米連邦準備理事会(FRB)によるパニック利下げのリスク、大きな不安を招く地政学――が投資家の世界的なリスク意欲に襲い掛かっている。

 過去数週間で対ドルで12%上昇した日本円の急騰をはじめとする日本特有の要因は、多くの日本企業の収益見通しに対する電撃的な見直しを引き起こしている。

 日経平均株価は2日金曜日、1987年10月の株価急落以来最大の下げに見舞われたかと思えば、週明け5日にはその暗澹たる記録がすぐに塗り替えられ、1日の下げ幅が「ブラックマンデー」後の暴落をも超えた。

 より幅広い銘柄で構成されるTOPIXは5日の終値ベースで、7月につけた史上最高値から20%以上も下げていた。

 数週間前には世界で最も上昇率が高い株価指数の一つに数えられていたTOPIXは、年初来のパフォーマンスが5%のマイナスになっていた。