甲子園をあきらめ大阪ドームで、との声も

 甲子園大会の決勝まで進んだ場合、選手たちは7月の予選も含め約1カ月間に10試合前後をこなすことになります。地方大会もほとんどが猛暑の野外で行われますから、選手の疲労は尋常ではありません。鍛えたはずの選手たちが熱中症で倒れたり、足をつったりするケースは毎年、地方大会でも甲子園大会でも続出しています。

 こうしたことから、スポーツ関係のメディアなどでは「甲子園での開催にこだわらず、大阪ドームなどドーム球場での開催を考えたらどうか」「過密日程を避けるため、甲子園だけでなく、別の球場も併用して実施すべきだ」「少子高齢化が進み、出場校が私立の強豪校に独占されるようになった現在、大会の在り方そのものを抜本的に見直したほうがいい」「部員の多い強豪校がますます有利になる」といった声が次第に強まっています。

 一方では、「甲子園は高校球児にとって特別な存在。甲子園以外の会場は考えられない」「暑さなどの外的条件はどの学校も同じ。与えられた条件で努力を尽くすだけ」という声も無視できません。

 さらにこの8月2日には高野連の理事会が「7イニング制」の検討に乗り出すことも明らかになりました。内部に検討会を設け、7回で試合を打ち切ることのプラス・マイナスを探ることになったのです。

 高野連によると、2023年の選手権大会では1試合の平均時間が2時間22分でしたが、7回までは1時間47分。約35分短くなる計算です。また、7イニング制については、すでに韓国や台湾など外国の高校生大会、U-18の国際大会などで導入されており、日本でも中学生の大会で実施されています。暑さ対策だけでなく、世界標準に合わせるメリットもあります。

 ただ、7イニング制については、早くも賛否が渦巻いています。報道によると、名門高校の監督からは「(将来的な導入は)当然。選手ファーストであるべき」(広陵高=広島県)という声の一方、「野球は8回、9回が大事。9回までやってもらいたい」(大阪桐蔭高)、「(弱小校と強豪校の)余計、差が出る」(明徳義塾高=高知県)といった声も出ています。

 いずれにせよ、どんな対策を取ろうとも温暖化そのものが薄まるわけではありません。今後も続く猛暑とどう折り合いをつけていくのか。高校野球そのものの在り方が問われる日もそう遠くないかもしれません。

フロントラインプレス
「誰も知らない世界を 誰もが知る世界に」を掲げる取材記者グループ(代表=高田昌幸・東京都市大学メディア情報学部教授)。2019年に合同会社を設立し、正式に発足。調査報道や手触り感のあるルポを軸に、新しいかたちでニュースを世に送り出す。取材記者や写真家、研究者ら約30人が参加。調査報道については主に「スローニュース」で、ルポや深掘り記事は主に「Yahoo!ニュース オリジナル特集」で発表。その他、東洋経済オンラインなど国内主要メディアでも記事を発表している。