滝のような迫力が“日本一”の理由
東山円筒分水は“日本一美しい”と言われる。そもそも円筒の直径が大きいことに加え、外縁から流れ落ちる水の落差が大きい。そして水量が多いために滝のような迫力がある。その水景が見る人を魅了するからだろう。
水量が多いこと、そしてなぜ円筒分水が作られたかは、この付近の地形を見ると納得できる。
東山円筒分水に湧き出る水は、猫又山(2378m)を水源とする片貝川から取水したものだ。片貝川は、延長27kmという短い距離で、2000mを越える山から富山湾まで、いっきに流れ下る日本有数の急勾配の川なのだ。
急流であるために洪水が起こりやすいし、夏季には渇水しやすい。このため、田畑への取水がうまくいかないことも多く、古くから水争いが絶えない地域だった。水量にかかわらず、一定の比率で水を分配する円筒分水は、それを見事に解決する画期的な仕組みだったのだ。
片貝川の上流部に堰を置いて(黒谷頭首工)、そこで取水した水を、片貝川の左岸にある「貝田新円筒分水槽」まで導水し、左岸の農地に農業用水を分配した。
さらに、貝田新円筒分水から片貝川の川底に埋めた導水管を通じて東山円筒分水に水を流し、右岸側の農地に水を分配しているのである。