選挙権の年齢は18歳に引き下げられたのに、立候補年齢はなぜ25歳・30歳なのか、自分たち世代が立候補できないから若者は政治への関心を失っているのではないか――。そう考えた若者たちが「立候補年齢の引き下げ」を求めて国を相手取った訴訟を起こし、東京地裁で裁判が続いています。先の東京都知事選では若い世代の多くが石丸伸二氏を支持し、「石丸ブーム」を引き起こしましたが、日本では選挙制度の壁によって若者が立候補できません。原告の若者たちはこの裁判で何を主張しているのでしょうか。被選挙権に関する世界の潮流はどうなっているのでしょうか。やさしく解説します。
立候補年齢引き下げ訴訟が問う不合理
「立候補年齢引き下げ訴訟」が始まったのは、ちょうど1年前、2023年7月のことです。原告は大学生3人を含む19〜25歳の6人(年齢は提訴時)。訴状によると、6人はいずれも同年3〜4月に行われた統一地方選挙の際、神奈川県知事選(供託金300万円)や鹿児島県議会議員選挙(同60万円)、千葉県船橋市議会議員選挙(同30万円)などに供託金を納付したうえで立候補届を各選挙管理委員会に提出しました。
ところが、各地の選管は公職選挙法が定める被選挙権の年齢に達していないとして、これらの届け出を受理しませんでした。このため6人は「被選挙権の年齢を25歳以上・30歳以上としている公職選挙法の規定は、国民主権や法の下の平等などを保障した憲法に違反する」として、立候補できる地位の確認などを求めて東京地裁に提訴したのです。
公選法は、選挙に立候補できる被選挙権の年齢について、①衆議院議員と都道府県議会議員、市区町村長・同議会議員は25歳以上、②参院選と都道府県知事選は30歳以上、と定めています。投票するための権利「選挙権」は2016年にそれまでの「20歳以上」から「18歳以上」に引き下げられましたが、被選挙権の年齢は公選法が施行されて以来、70年以上も変わっていません。
「18歳選挙権もできたのに若者は政治に無関心だ」という社会の批判はまん延していますが、その若者が自ら議員となって政治に参加していく道が閉ざされているのです。
訴訟のなかで原告の若者たちは、次のように訴えています。
「有権者の代表として議会に籍を置くのは大半が中高年。平均年齢は60歳代で、40代が若手議員と呼ばれている。当事者としての若者の声は政治の場で消化されることなく、蒸発している」
「同世代の候補者がいないため、若者の政治的無関心も助長してしまう。若者の投票率低下や政治離れには、こうした政治制度にも原因がある」
そのうえで、原告たちは「立候補年齢がなぜ25歳以上・30歳以上に設定されているのか、その理由を誰も合理的に説明できない」と主張しているのです。