不平不満や愚痴、陰口などをノートに書き出し、見つめ直すことで、最終的には愛や希望に行き着くという(写真:maruco/イメージマート)不平不満や愚痴、陰口などをノートに書き出し、見つめ直すことで、最終的には愛や希望に行き着くという(写真:maruco/イメージマート)

 人の陰口や悪口を延々と口にしている人を見かけると、おっかないと思う。陰口や悪口など極力口にしないほうがいいし、なるべく人とは争わないほうがいい。でも、本当に陰口や悪口と絶縁できるのだろうか。

 むしろ目を背けずに、あふれ出す悪口を分解・分析していくと、思いがけない正反対の心理がそこには隠れている。『ずるいくらいいいことが起こる「悪口ノート」の魔法』(青春出版社)を上梓したメンタルコーチの石川清美氏に聞いた。(聞き手:長野光、ビデオジャーナリスト)

──本書を通して、石川さんは「悪口ノート」の書き方について解説されています。悪口ノートとは何でしょうか?

石川清美氏(以下、石川):悪口ノートとは、その名のごとく、悪口を書き込むノートです。不平不満、愚痴、陰口、人に相談したいこと、さらに自分の頭の中で自分自身に対して言う自責の念や、嘆きのようなものさえ私はここで悪口の定義に含めています。

 そのように広く悪口と定義した言葉や思いをノートに書き出していき、その次に自分が書き並べた悪口に、自分でツッコミを書き込んでいきます。この「ツッコミ」とは、質問や自問自答です。自分で書いた悪口に自分でツッコミを入れていくと、自分でも意識していなかった答えや考えが浮き上がってきます。

 このようにして悪口にツッコミを入れて見えてきた自分の意思や思考を、「自分の設定」と私は呼んでいます。これは思い込みや固定観念と言い換えることができます。

 悪口を分解してたどり着く自分の設定を、より自分がこうありたいと思う内容に書き変えると、心が軽くなり、目の前の問題や課題に対する解決法やアイデアが浮かんでくる。ですから、悪口は幸せへの入り口。悪口ノートは自分を導いてくれるテクニックと言えます。

──「自分の意見や願いを相手にしっかり言葉で伝えられていると思っていたつもりが、それは本当の願いではなかったことに、私は悪口分解をして気づきました」と書かれています。人が口にする様々な意見や主張は、必ずしもその人が本当に言いたいことではない、ということですか?

石川:セッションを通して多くの方々の話を聞きます。その時に、自分の発言をノートに記載してもらいます。私自身もメモを取ります。私がある質問をすると、相手が答える。ところが、それから数分して、また同じ質問をすると、なんとその方は先ほどの回答とは全く違うことを答えるのです。

 そして、本人も自分が同じ質問に対して異なる回答をしたことに気づきません。こちらはメモを取っているので「先ほどと今で、同じ質問に対して回答がこのように変わったのはどうしてですか?」と質問すると「なんでだろう」と悩み始めます。そこで、気づいたことを再びノートに書き出してもらう。

 この作業を繰り返していくと分かることは、頭の中でぱっと思い浮かぶ自分の意見や主張と、その人の中を深く見ていくと見えてくる、その人の本音や心理は往々にして異なるということです。

──同じ質問を数分おいてされると、人はそんなに方向性の違う回答をするのですか?

石川:します。嘘つきと言いたくなるほど、真逆の回答が返ってくることがよくあります。

──人が会話の中で口にすることは、あてにならないということですか?

石川:あてになりません。よほど話している内容に対して、自分の考えを分析して整理できている方は思考と言葉が一致しますが、多くの話題においては、人は適当に喋っています。支離滅裂と言っても過言ではありません。