これから始まるフランス極右政党と欧州委員会のバトル

 今後の手続き上の展開はどうなるのか。

 EDP手続きの対象となった加盟国では財政赤字から景気循環要因および一時的要因を取り除いた構造的財政収支(対GDP比)について、年間0.5%に相当する財政再建が求められる(2025~27年は利払い費の増加分を計算から除外)。厳密には、必要とされる財政再建の幅は欧州委員会から提示されることになっている。

 なお、欧州委員会の発表文書によれば、加盟国は9月20日までに中期構造改革計画の第1回案を提出する必要がある(欧州委員会との合意があれば合理的な期間に限って延長可能との付記あり)。

 その後、10月15日を期限として2025年予算案を欧州委員会に提出し、ここで合意が取れたものを自国の国会に提出するという手続きが控えている(「10月15日」は必ず毎年決められた期限で今年に限った日付ではない)。

 EDP手続きに入ってもなお事態の改善が見られない場合は、最大で名目GDP対比0.05%の罰金が科され、効果的な措置が採られるまで6カ月ごとに累積加算されることになっている。秋口にかけての各国予算編成が市場の注目する時間帯になるだろう。

 ここまでは手続き上、決められている展開だが、問題は現状の政局不安と相まって事態が混迷を深めるリスクがあることだ。

 今回、勧告対象となった加盟国の財政状態が芳しくないことは知られていたことであり、その点にサプライズはない。だが、現状は欧州議会選挙で極右勢力が躍進し、これを受けてフランス国民議会が電撃的に解散総選挙に至るという事態が発生している。

 こうした状況下、既に極右政党が政権を持つイタリアは元より、来月の総選挙を経て誕生するだろう極右政党に議会を押さえらえるフランスのリアクションが懸念される。具体的には欧州委員会との対立構図を市場は注目することになる。