規則が緩和されたにもかかわらず違反判定の7カ国

 最も重要な点は、各加盟国のオーナーシップ(端的には裁量余地)を強化し、債務削減の進捗について柔軟性を認める方向に舵が切られている点と言える。

 例えば、4年間の中期財政構造計画(Medium Term fiscal structural plan)に沿った純支出(政府歳出から利払費等を除いたもの)を判断基準とすることが定められている。

 つまり、各国が用意した中期計画の枠内であれば、欧州委員会との合意がある限りにおいて、債務削減が進む年もあれば、進まない年もあるという建付けが認められている。

 さらに、EUの優先課題(グリーン関連など)に関する改革や投資を行う際には計画期間が最大7年間まで延長可能という特例もある(なお、利払い費を除く純支出ベースが基準とされたのはフランスの強い希望として知られる)。

 もちろん、計画は加盟国ごとに異なるため、これまでのような財政規則の一律適用が封印されたという点がポイントになる。

 一方、政府債務残高が仮にマーストリヒト基準(GDP比60%)を超えた場合、これまでは超過分の5%ずつを毎年削減させることを義務付ける「20分の1ルール」が存在した。これは新規則では撤廃されている。

 代わりに「債務残高90%以上はGDP比1%ずつ、60~90%は同0.5%ずつを毎年削減」という新しいルールが導入されている(これはドイツの意向が強いことで知られる)。

 今回はこうした加盟国の裁量を認める制度変更に加え、戦時中であること(≒ウクライナ情勢)も踏まえた防衛費増加もEDP判定にあたって斟酌されており、純支出が政府計画から逸脱していることにも幅が認められている。

 それでもなお、違反と判定されたのが上述の7カ国という整理になる。