第5部 ロシア新内閣の注目人事

5-1. 第5期新大統領就任と新内閣発足:

 ロシアでは5月7日の新大統領就任式後、5月14日に新内閣が正式に発足しました。

 露下院は5月13日、M.ミシュースチン新首相が下院に提案した10人の副首相候補を承認。A.ベラウーソフ第1副首相(65歳)の後任は、D.マントゥ―ロフ産業・通商相(55歳)が昇格しました。

 ベラウーソフ氏は国防相に就任。一見降格人事のように見えますが、プーチン大統領の切り札として、「戦時経済」立て直しのために登用された起死回生人事です

 新国防相就任と同時に国防省内部の汚職が表面化、前触れは4月23日のイワノフ国防次官(上級大将)拘束です。

 5月13日には人事総局Yu.クズネツォフ総局長(中将)が拘束され、今後拘束される国防相幹部が逐次報じられることになるでしょう。

 安保会議書記を解任された注目のN.パートルシェフ氏(72歳)は大統領府補佐官に就任、E.ナビウーリナ中銀総裁は留任。

 N.パートルシェフ補佐官は、息子を副首相に昇格させる対価として、自分が政治中央から少し距離を置くバーター取引に応じたものと考えられます。

5-2. プーチン大統領の権力基盤構造:

 プーチン大統領の周囲にて相互協力・対立を繰り返す4派閥の新メンバーは下記の通りにて、各種矢印は筆者が推測する政権内部における本人存在感のイメージです。

5-3. ロシア新内閣概観:

 ロシアでは5月7日に新大統領が誕生。5月14日に発足した内閣閣僚主要人事は下記の通りです。

露首相:M.ミシュースチン首相(58歳)留任

 露ミシュースチン首相は5月17日、各副首相の担当分野を以下の通り発表しました。

副首相:

D.マントゥーロフ第1副首相(55歳) : 全般
A.ノーヴァク副首相 : エネルギー・経済管掌
T.ゴーリコヴァ副首相 : 労働・福祉・文化管掌
V.サヴェリエフ副首相 : 交通・運輸管掌
D.グリゴレンコ副首相 :官房長官兼任/ IT・AI技術、反独占政策管掌
A.オヴェルチューク副首相 : BRICS・上海会議・旧ソ連邦諸国との経済協力関係管掌
D.パートルシェフ副首相 : 農林水産業・環境管掌
Yu.トルトネフ副首相 : 極東・北極圏開発管掌
D.チェルヌィシェンコ副首相 : 教育・青少年政策管掌
M.フスヌーリン副首相 : 住宅・不動産管掌

露大統領府人事:プーチン大統領は5月14日、大統領府人事発表。注目すべきはデュ―ミン氏です。

A.ヴァイノ大統領府長官、S.キリエンコ第1副長官、A.グローモフ第1長官留任
M.オレーシュキン補佐官は副長官に昇格
S.イワノフ大統領特別代表とペスコフ報道官は留任
A.デュ―ミン/トゥーラ州知事は大統領府補佐官に就任(→国家評議会書記にも就任)
N.パートルシェフ前安保会議書記は大統領府補佐官に就任(→実質降格人事)
連邦管区大統領全権代表は全員留任

その他、注目すべき閣僚級人事:

S.ラブローフ外相/A.シルアーノフ財務相/E.ナビウーリナ中銀総裁/V.ゲラーシモフ参謀総長留任。
S.ショイグー国防相は安全保障会議書記に横滑り。これは安保会議の地位低下を示唆しています

 ウクライナ戦争の今後の戦況いかんでは、プーチン大統領を支えてきた利権集団間の対立、さらには同じ利権集団内部での対立抗争も顕在化・表面化することも予見されます。