第6部 プーチン大統領訪朝

 2000年5月7日にロシア新大統領に就任したばかりのプーチン大統領は同年7月17日訪中、19日訪朝、その後訪日しています。

 その後プーチン大統領は頻繁に訪中していますが、今回の訪朝は2000年7月に金正日総書記と会談以来、24年ぶりの訪朝になります。

 これは過去24年間、プーチン大統領にとり訪朝が意味なかったことを示唆しています。

 換言すれば、過去24年間意味のない訪朝が今回意味あるようになったこと自体、現在のプーチン氏の立ち位置を暗示していると言えましょう。

 結論をズバリ申せば、それほどプーチン氏は追い詰められていると筆者は考えます。

6-1. 第1期プーチン新大統領訪朝(2000年7月):

 ではここで、プーチン新大統領が登場した2000年5月から7月までを回顧してみます。

 プーチン新大統領は2000年5月7日に大統領就任後、直ちに積極的外交を展開。就任直後の7月17~23日には、1週間でソ連邦・ロシア連邦史上最高密度の内政・外交日程をこなしました。

 B.エリツィン前大統領政権下では、想像だにできない超過密日程でした。ご参考までに、当時の1週間を振り返ってみます。

 プーチン新大統領は7月17日、休暇地ソチからモスクワ経由、北京訪問。

 19日には北京から平壌に移動、20日に平壌から中・露国境の町ブラゴベーシェンスクに移動。

 プーチン大統領は沖縄サミット参加のため、7月21日にブラゴベーシェンスクから沖縄に移動。

 23日、沖縄サミット終了とともにカムチャトカ半島ペトロパブロフスク訪問。

 同地訪問目的は、燃料・エネルギー事情視察と発表されましたが、そんな単純な話ではありません。

 ブラゴベーシェンスクは対中石油・ガス輸出の国境拠点、ペトロパブロフスクは露太平洋艦隊原子力潜水艦の艦隊根拠地です。

 プーチン大統領はペトロパブロフスクの持つ地政学的重要性を正しく認識しているがゆえに、同地を訪問しましたが、突然のブラゴベーシェンスク訪問には裏話があります。

 本来、プーチン新大統領は訪朝後の19日に訪日予定でしたが、日本がプーチン氏抜きで7月20日にG7開催を決めたことに抗議して訪日を遅らせ、21日の沖縄訪問となりました。

 参考までに、当時誰がプーチン新大統領訪朝に同行したのか概観します。

訪朝ミッション(2000年7月19日 北京⇒平壌):

主要議題  :朝鮮半島問題/露・朝国境地域間取引拡大策
同行メンバー: I. クレバノフ副首相(軍需産業担当)
        I. セルゲーエフ国防相
        I. イワノフ外相
        S. プリホドコ大統領府副長官(外交政策担当)
        V. フィリポフ教育相
        K. プリコフスキー中将(大統領極東全権代表)
        D. メドベージェフ大統領府第1副長官
        A. イラリオーノフ大統領経済担当補佐官
        Y. テン露下院議員(イルクーツク州選出)
        E. ナズドラチャンコ沿海地方知事

 上記同行メンバーの中で、今もクレムリンに残っている人物は忠犬熊公(メドベージェフ)のみです。

6-2. 第5期プーチン大統領訪朝(2024年6月19日):

 プーチン大統領は6月19日未明平壌到着、同日首脳会談実施。訪朝後、ベトナムに移動しました。

 露朝は19日、包括的戦略パートナーシップ条約を調印。1961年に締結した軍事同盟とほぼ同じ内容になりました。

 ソ連・北朝鮮は1961年、準軍事同盟「友好協力相互援助条約」を締結。1996年に有効期限満了の際、延長せず破棄されました。

 6月19日に調印された包括的戦略パートナーシップは、どちらか一方が軍事侵攻を受けた際、参戦する内容を含む準軍事同盟です。

 ご参考までに、今回のプーチン訪朝に同行した主要メンバーは下記の通りです;

D. マントゥーロフ第1副首相
A. ノーヴァク副首相 (エネルギー・経済管掌)
A. ベラウーソフ国防相
S. ラブローフ外相
Yu. ウシャコフ大統領補佐官(外交担当)
D.ペスコフ報道官

 ロシアは北朝鮮から武器・弾薬の供給を受けており、対価として北朝鮮に石油製品(軽油・重油類)を供給しています。

 格下の北朝鮮に武器・弾薬を依頼するほど、ロシアはウクライナ戦争の泥沼に嵌っていると言えましょう。

 欧米による対宇軍事支援が続く限り、ウクライナ軍は(勝たなくとも)負けることはありません。

 依然として戦争終結の姿は見えず、欧米軍需産業と中国やインドは漁夫の利を得ています。

 特に、中国にとっては内心笑いが止まらないことでしょう。口先介入だけで、熟柿が落ちてくるのを待っていればよいのですから。

 ロシアにとってのウクライナは、米国にとってのベトナムソ連にとってのアフガンになる可能性大と筆者は予測しております。