第1部:2油種(北海ブレント・露ウラル)週次油価動静(2021年1月~24年6月)

 最初に、2021年1月から24年6月までの代表的2油種(北海ブレントと露ウラル原油)の週次油価推移を概観します。原油需給は均衡しており、地政学的要因以外に油価上昇材料は現状存在しません。

 北海ブレントはFOB(Free on Board=本船渡し)スポット価格、ウラル原油は露黒海沿岸ノヴォロシースク港出荷FOB油価です。

 ロシアの代表的油種ウラル原油は、西シベリア産軽質・スウィート原油(硫黄分0.5%以下)と南部ヴォルガ流域の重質・サワー原油(同1%以上)のブレンド原油で、中質・サワー原油になります。

 米国は2022年5月度よりロシア産石油(原油と石油製品)の輸入を停止しました。

 一方、日本が2022年5月まで輸入していた露産原油3油種(S-1ソーコル原油/S-2サハリン・ブレンド/シベリア産ESPO原油)はすべて軽質・スウィート原油で、日本はウラル原油を輸入していません。

 油価は2021年初頭より22年2月まで上昇基調でしたが、ウラル原油はロシア軍のウクライナ侵攻後下落開始。

 2022年4月のOPEC+(石油輸出国機構+)によるサウジアラビア自主減産合意を受け、油価は上昇開始。

 その後、油価は乱高下を繰り返しながら、今年4月以降の油価は下落傾向に入りました。

 露ウラル原油の2024年6月10~14日週次平均油価は$67.89/bbl(前週比+$3.64、bbl=バレル、1bblは約158.9リットル)と上昇。

 北海ブレントとウラル原油の値差はロシア軍のウクライナ侵攻後、一時期最大バレル$40の大幅値差となりましたが、最近は値差$14まで縮小。

 しかし原油性状の品質差による正常値差は$2~3程度ゆえ、依然としてロシア産原油のバナナの叩き売り状態が続いていることになります。

 これが欧米による対露経済制裁効果です。

 この安値ウラル原油を輸入し、自国で精製して石油製品(主に軽油)を欧州に国際価格で輸出して、“濡れ手に粟”の状態がインドです。しかしこれはビジネスそのものであり、政治的動機はありません。

 付言すれば、中国がロシアから輸入している主要原油はウラル原油ではなく、長期契約に基づきESPOパイプライン(PL)で輸送されているシベリア産ESPO原油です(一部、ESPO海上輸送あり)。

 世界の原油需給は均衡しています。油価は下落傾向にて、油価下落は露財政悪化を招いています。

出所:米EIA資料より筆者作成/黒色縦実線:22年2月24日/横線赤字:露国家予算案想定油価/黒字:油価実績