空飛ぶクルマやドローンに淘汰の波

 リチウムイオン電池については、電解質が固体でエネルギー密度が高い全固体電池の研究開発が進んでいるが、筆者はトヨタや日産など自動車メーカー各社の技術部門幹部から直近の開発状況について詳しい説明を受けている。その上で、全固体電池が「空飛ぶクルマ」の社会実証に向けた「決定打になる」とまでは言い切れない。

 そのため、例えばホンダが推奨して研究開発を進めている、ジェットエンジンを発電機として使う、いわゆるシリーズハイブリッド方式の原動機の導入に期待がかかる。ホンダ以外でもシリーズハイブリッド方式での研究開発を進めている企業があるが、今回の展示会では実機の出展はなかった。

三菱重工業が研究開発中の物流用の中型ドローン(写真:筆者撮影)

 こうした「電池問題」はドローンでも同様だ。以前からドローン事業に参入している事業者の多くが、「実質的な後続距離が15〜20分間程度では、保守点検や測量など、ユースケースは限定的にならざるを得ない」という旧来からの課題を挙げる。

 その上で、「技術的な制約がある中で、現実的なユースケースを踏まえて事業が徐々に確立してきた」という指摘もある。

 事業例としては、九州電力ドローンサービスがある。

 九州電力は2019年からドローンを使った空撮、点検、測量などを行ってきたが、これまでの知見を活かして九州のみならず全国にサービスを拡張するため4月に新会社を発足させた。

 同社では上空でのドローンサービスのみならず、狭いトンネルなどの保守点検を行う小型自動運転車や各種ロボットなど、様々なモビリティを活用したサービス事業を構築している。

 今回の展示会では、業界内でドローンや「空飛ぶクルマ」に対する「現実解」への認識が高まる一方、それを見いだせなければ事業の淘汰が進みそうな印象を持った。

桃田 健史(ももた・けんじ)
日米を拠点に世界各国で自動車産業の動向を取材するジャーナリスト。インディ500、NASCARなどのレースにレーサーとしても参戦。ビジネス誌や自動車雑誌での執筆のほか、テレビでレース中継番組の解説なども務める。著書に『エコカー世界大戦争の勝者は誰だ?』『グーグル、アップルが自動車産業を乗っとる日』など。
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