原発、脱炭素と安全保障で再評価

 こうした生成AI普及による電力需要拡大に加え、収益力の高い原発への再評価の流れも電力株を押し上げる要因となっています。

 5月27日に女川原子力発電所2号機の安全対策工事を完了した東北電力の株価は、翌28日に一時前日比12%高の1565円50銭となり5年4カ月ぶりの高値を更新。原発再稼働による収益の改善を期待する買いが集まりました。

 大手電力は石炭や天然ガスなどの燃料費の高騰で22年度は赤字が相次ぎましたが、原発の稼働率の上昇や燃料費の減少、値上げなどが奏功し、23年度はV字回復。原発の再稼働が進んだ関西電力の24年3月期の純利益は4418億円と18年ぶりに過去最高益を記録しています。

 株価の急上昇が目立つ米国のヴィストラも24年3月に原子力発電所を抱えるエナジー・ハーバーの買収を完了したと発表。競争力のある原発はデータセンターなどからの需要を取り込みやすいと評価されています。アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)も米国のタレン・エナジーから原子力発電所直結のデータセンターを取得することが明らかになっています。

 23年に開かれた「COP 28(国連気候変動枠組条約締結国会議)」では、米国や日本、カナダや韓国など25カ国が「2050年までに20年比で世界全体の原子力発電容量を3倍にする」という共同宣言に賛同しました。ウクライナ情勢を背景としたエネルギー安全保障の確保やCO2排出削減などの観点から原発を再評価する動きが強まっています。