変化自在なトクリュウの犯罪スタイル

 以前、筆者が半グレの実態を知りたいと考え、刑務所に収監されている有名な半グレに半グレ犯罪の実態について尋ねたことがある。

 その半グレいわく、彼らの犯罪とは「暴力団と半グレのシノギは共有され、違う形態へと移り変わっていきます。『オレオレ』ばっかりをマークしていると、その裏では違うシノギが新たに顔を出すというような塩梅です」ということであった(『だからヤクザを辞められない』新潮社、2021年)。

 実際、彼の言うとおりで、トクリュウの犯罪は、コロナ禍前はオレオレ詐欺からアポ電強盗へ。その後のコロナ禍では、持続化給付金詐欺やキャッシュカードすり替え詐欺(詐欺盗)が流行し、コロナ禍の外出自粛が解除されてからは、ルフィ事件に代表される広域強盗事件が頻発した(小規模な強盗や空き巣は、現在も続いている)。

 時流を読み、変化自在で柔軟な犯罪がトクリュウのスタイルである。実際、いま起きているトクリュウの犯罪の流れがどこまで続き、どのように変化するのか、予測することは難しいが、ここにきて増えてきたのが特殊詐欺やロマンス詐欺ということである。

SNS投資詐欺やロマンス詐欺は「ローリスク・ハイリターン」

 トクリュウ型犯罪の変化に筆者は納得できる。それは、SNS投資詐欺やロマンス詐欺が「ローリスク・ハイリターン」だからだ。オレオレ詐欺のような特殊詐欺、カードすり替え詐欺のような詐欺盗は、かけ子、受け子の募集からトレーニング(おそらくロールプレイングで即席教育)が不可欠であった。

 強盗は、欲と度胸があれば、今日実行犯を集めて、明日にでも犯罪を実行できる。ハイリスクだが、情報がしっかりしたものであればハイリターンが可能である。ただし、報道などで明らかになってきているが、犯人は逮捕される可能性が非常に高い。

 そうした点を考慮すると、投資詐欺やロマンス詐欺は“効率がいい”犯罪なのである。被害者の欲や恋愛感情に付け込み、言葉巧みに騙して金を詐取するから、証拠が残りづらい。監視カメラを気にする必要もない。