恋愛感情を巧みに操り男性から金を騙しとる「頂き女子」が話題に。写真はイメージ(写真:maruco/イメージマート)
  • 新宿のタワーマンションに住む25歳の女性が、51歳男性に刺殺された事件。報道によれば、容疑者は愛車を売り1000万円以上を女性に渡したが、女性に冷たくされ犯行に及んだという。
  • 昨今、いわゆる男性の恋愛感情を利用し金銭を騙しとる「頂き女子」と餌食になる「おぢ」、という関係性が話題になっており、今回の事件と関連づけて論じる向きもある。
  • 作家の橘玲氏はこうした事件が起きるのは「エロス資本のマネタイズが容易になったことが背景にある」と分析。今後も同様の事件が起きると予測する。インタビューを3回に分けてお届けする。

湯浅大輝(フリージャーナリスト)

【連載:橘玲氏に聞く「エロス資本」】
(上)新宿タワマン刺殺事件を「頂き女子」文脈で語ってはいけない…橘玲氏が問う、エロス資本のマネタイズはダメなのか?
(中)橘玲氏が「頂き女子りりちゃん」マニュアルを分析…“ギバーおぢ”は単なる「金づる」、ナンパ師との類似性とは
(下)SNSが結びつける「エロス資本」と「おぢ」、女神化した女性と交際し一発逆転を狙う「無理ゲー」が不幸な事件を招く

──エロス資本をマネタイズすることには、根強い批判があります。

:男の場合は、若い女性がお金と引き換えにエロスを提供する売春は喜んで認めるものの、自分の彼女や妻が風俗などでエロスをマネタイズすることは許さないというダブルスタンダードがありますよね。しかしこの問題をより複雑にするのは、(フェミニストを含む)女性の多くが、エロス資本を換金する女性を敵視していることです。

 ハキムはこれを、「エロスは愛する男に無償で提供すべきだ」という「ロマンティックラブ・イデオロギー」だと批判しました。セックスとお金を交換すると、純愛(ロマンティックラブ)が汚されてしまうというのです。

 もちろん私も、男と女が純粋に愛しあって、ロマンティックにセックスを無償で提供し合うことは素晴らしいと思います。しかし現実には、そんなカップルばかりではない。

橘 玲(たちばな・あきら) 作家
1959年生まれ、2002年、国際金融小説『マネーロンダリング』でデビュー。同年刊行され、「新世紀の資本論」と評された『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』が30 万部を超えるベストセラーに。2006年、『永遠の旅行者』が第19 回山本周五郎賞候補作となる。2017年、『言ってはいけない 残酷すぎる真実』で新書大賞受賞。近著に『世界はなぜ地獄になるのか』、『テクノ・リバタリアン』など。

 そもそも、女のことをセックスの対象としか見ていない男はたくさんいます。そう考えれば、男のことを金づるとしか思っていない女が同じくらいたくさんいても、なんの不思議もないでしょう。

 このとき、男の買春は許容しておいて、女にだけ都合のいいロマンティックラブ・イデオロギーを押しつけるのは女性差別でしょう。そう考えれば、エロス資本のマネタイズを否定するフェミニストは、「女性を差別している」ことになります。

──「頂き女子りりちゃん」のマニュアルがネットに公開されて話題になりましたが。