タワマン建設を抑制する条例を制定した江東区だが…

 タワマンは一棟できると人口が500人~1000人単位で増える。従来、人口増は自治体にとっては歓迎すべき話だが、局地的に人口が急増する現象は喜ばしいことばかりではなく、頭の痛い問題を発生させる。

 なぜなら、江東区の人口増は出生率の上昇によって実現したものではなく、転入した世帯によってもたらされているからだ。江東区で子供が産まれ、育っていくなら事前に保育所や小中学校といったインフラを計画的に整備できるが、タワマンの多くは近隣自治体からの転入者のため、突如としてあらゆる施設の需要が急増する。

 保育所にしろ、小中学校にしろ、行政のインフラ整備は議会で予算を通し、そこから用地の確保、建設という手順を踏む。このサイクルは早くても2~3年、通常なら5年以上はかかる。タワマンによって局地的に人口が増加する事態に対して、江東区の対応は後手に回っていた。小学校などは校庭に仮設の校舎を一時的に継ぎ足すような措置を講じて臨時的に対応した。

 対策に窮した江東区は、2004年にタワマン建設を抑制する条例を制定した。4年間という時限立法だったが、効果はすぐに表われて人口増は一時的に緩やかになった。しかし、2007年に条例が失効すると、再び豊洲界隈でタワマンが増え、同じ問題が発生する。

 江東区は次なる対策として「マンション建設計画の事前届出等に関する条例」と「マンション等の建設に関する条例」の2つの条例を制定。特に後者の条例は、151戸以上のマンションに対して原則的に保育所などを併設することを定め、局地的に人口増加を引き起こすタワマン対策とした。

 これらの条例によってタワマン付近で起きていた待機児童問題は解消へと向かうが、タワマンに保育所が併設されているという点が若い世代から「子育てしやすい」という評判につながり、逆にタワマン建設は加速。このスパイラルにより、江東区の人口は右肩上がりで増えていく。