JR東海が進めてきた中央新幹線(リニア)は、このほど2027年の開業を断念。2034年以降の開業へと計画を変更した。辞職する静岡県の川勝平太知事が静岡工区の着工を認めてこなかったことが原因とされているが、果たしてそれだけが開業遅れの要因なのか。ライターの小川裕夫氏が、リニア開業に立ちはだかる壁についてレポートする。(JBpress編集部)
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東海道新幹線のバックアップ機能を果たせるか
JR東海は建設を進める中央新幹線(リニア)の開業時期について、「2027年度内」から「2034年以降」へと計画を変更した。その要因として、辞職を決めた静岡県の川勝平太知事が静岡工区の着工を認めてこなかったことが大きく報道されているが、果たしてそれだけが開業遅れの原因なのだろうか。
実際に川勝知事の意向や静岡工区の建設遅れがリニア開業延期の一因であることは否定しないが、それはあくまでひとつの要因に過ぎない。
そもそもリニアの開発は1960年代にスタートしている。東京─大阪間を約1時間で結ぶリニアは、日本の大動脈を担う東海道新幹線を代替する高速鉄道として開発が進められた。東海道新幹線は1964年に開業したが、当時の技術陣は「(線路などの設備に関して)開業から10年間は大丈夫だが、20年持つかどうかは分からない」との見解を示していた。
東海道新幹線は開業時から日本の大動脈を担い、不可欠なインフラとなってきたが、東海道新幹線が老朽化して機能不全に陥ってしまったら日本経済は停滞し、社会が混乱することも考えられた。そのため、開業直後の1970年代から東海道新幹線を代替する東京―大阪間の高速鉄道が模索されてきた。
今年3月16日に石川県の金沢駅から福井県の敦賀駅まで延伸開業した北陸新幹線も東京―大阪を北陸経由で結ぶことが目的とされ、東海道新幹線が不通になった際のバックアップとして1970年代から計画が進められていた。現状では大阪までの延伸開業のメドは立っていないが、延伸が実現すれば東海道新幹線のバックアップ機能を果たすことができる。
東海道新幹線が走るエリアは首都直下型地震や近年に頻発している大規模豪雨、さらには富士山の噴火といった災害リスクが高い。老朽化だけではなく、不測の事態に対応する必要がある。
そうした大規模災害が起きれば、地理的に近い場所を走っているリニアも東海道新幹線と同時に不通となることは想像に難くない。それゆえに、リニアが大規模災害時に東海道新幹線のバックアップ機能を果たせるかどうかは大いに疑問が残る。