北海道新幹線2016年に開業した北海道新幹線(写真:HIROYUKI OZAWA/アフロ)

 現在、「新青森駅(青森市)─新函館北斗駅(北海道北斗市)」間を走る北海道新幹線。2030年度末に道都・札幌市の玄関となる札幌駅までの延伸開業を目指していたが、延期する見通しとなった。だが、そもそも札幌延伸によってさまざまな問題が生じてくる恐れがあるという。ライターの小川裕夫氏が、北海道新幹線が抱える「難題」についてレポートする。(JBpress編集部)

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新幹線の札幌延伸でJRから切り離される「並行在来線」

 北海道新幹線を運行するのは北海道旅客鉄道(JR北海道)だが、札幌駅までの延伸は独立行政法人である鉄道建設・運輸施設整備支援機構(JRTT)が建設主体として工事を担当している。その同機構が延伸開業の延期を正式に発表した。

北海道新幹線の延伸ルート延期となった北海道新幹線の延伸ルート(画像:共同通信社)

 延期の主因はトンネル工事の遅れということだが、以前から2030年までに札幌駅まで延伸開業させることは工期的に見ても難しいのではないかと予測されていた。

 それでも2030年の開業目標をかたくなに掲げてきたのは、北海道や札幌市の政財界が2030年に札幌五輪を誘致したいという思惑を抱いていたからだ。札幌五輪を理由にして都市開発を進める。北海道新幹線の札幌延伸は、その起爆剤として考えられていた。だが、2030年の札幌五輪誘致を断念した今、開業を急ぐ必要もなくなった。

 すでに駅周辺では開業に向けた都市開発が進められているが、延期により開発計画は大幅に狂うことになる。延伸を前提にしていた北海道や札幌市といった自治体、経済界などからも落胆の声が漏れている。

 開業延期の発表後、北海道の鈴木直道知事は国土交通省を訪問した。北海道新幹線は北海道全体の都市開発や経済活性化に大きく寄与するとして、斉藤鉄夫国土交通大臣に早期開業を求める要望書を手渡した。

北海道の鈴木直道知事北海道の鈴木直道知事(筆者撮影)

 JR北海道も札幌駅延伸に期待を抱いていた。というのも、北海道新幹線が札幌駅まで延伸開業することによって、函館本線の大部分がJR北海道から切り離される。

 函館本線は道内を走る鉄道路線でも屈指の大幹線だが、他方でJR北海道の経営を圧迫する存在でもあったため、切り離しがJR北海道の負担軽減につながり、経営を好転させると期待されていたのである。