函館市長が公約に掲げた「ミニ新幹線構想」
鉄道の線路は2本のレールから構成され、このレールの間隔を「軌間」と呼ぶ。通常、新幹線は1435mmで、JR線の多くは1067mmとなっている。軌間が異なれば、列車は直通運転ができない。
だが、ミニ新幹線は在来線の1067mm軌間を1435mmへと改軌することで新幹線の直通運転を可能にしている。ミニ新幹線は新幹線と在来線どちらの路線も走れるので、両方に対応した車両を製造しなければならず、車両製造のコストはそれほど圧縮できない。
しかし、新幹線のためだけに線路用地を確保する必要はなく、用地取得や建設工事も少なくて済む。駅などの諸施設も在来線のものを利活用できるため、この部分では大幅にコストダウンを図れる。
これまでにも、1992年に福島駅―山形駅間の奥羽本線を改軌する形で、山形新幹線がミニ新幹線として開業。当初は山形駅までだった山形新幹線は、1999年に新庄駅まで延伸を果たした。
秋田新幹線も盛岡駅―秋田駅間を走る田沢湖線と奥羽本線を改軌したミニ新幹線として1997年に開業した。この手法を用いることで、大きな需要が見込めない地方都市にも新幹線を走らせることができるようになったのである。
新幹線が走り、東京とつながることで地方都市の発展が期待された。しかし、改軌すると、当然ながら在来線は走れなくなる。ミニ新幹線によって、東京とつながることで地域住民の足を犠牲にするという副作用も生じた。
函館市長に就任した大泉氏が公約に掲げたミニ新幹線は、新函館北斗駅―函館駅間の在来線を改軌するものではなく、在来線の線路にもう一本のレールを付け足す「3線軌条」と呼ばれる方式で整備する構想だった。これならば、新函館北斗駅―函館駅間は新幹線と在来線どちらも走ることができる。
大泉市長が誕生してから2年が経過し、現時点で具体的な動きは見られないが、公約では2030年の札幌駅延伸と同時にミニ新幹線を整備するとしていた。しかし、延伸延期を受け、函館駅に乗り入れるミニ新幹線構想も延期される可能性が高い。