地方都市で新幹線と在来線の並立は「オーバースペック」
北海道新幹線は開業した2016年当初から多くの期待を集める一方で、さまざまな問題も露呈した。
北海道新幹線はJR北海道管内に奥津軽いまべつ駅・木古内駅・新函館北斗駅の3駅が所在している。奥津軽いまべつ駅は青森県内に立地しているが、新青森駅以北の区間が北海道新幹線とされているので、JR北海道の管轄となっている。
そうしたややこしい事情もさることながら、北海道新幹線3駅のうち、北海道の玄関駅の機能を期待された新函館北斗駅においても問題が浮上した。同駅は函館市に所在していないため、新幹線駅が立地する「北斗市」と道南の拠点都市である「函館市」との間で一悶着が起きたのだ。
明治期から北海道の玄関という位置付けにあった函館市は、道外への訴求効果も含めて新幹線駅に「函館」を盛り込むことを主張した。一方、駅が立地する北斗市も自治体名をアピールする絶好のチャンスとばかりに、駅名に「北斗」をつけようと意気込んだ。そして、すったもんだの末に「新函館北斗」という玉虫色の駅名で決着する。
駅名問題は解決したが、新幹線開業により動線は大きく変化した。函館市から北海道の玄関という役割は薄れ、それが函館市の経済や産業、人口動態にも影響を与えた。函館市は異国情緒あふれる都市景観から観光人気が高く、それによって宿泊や飲食業、土産物の製造・販売といった産業を創出してきた。
だが、北海道新幹線の開業後は道南としての拠点性が薄れてしまったことが影響し、観光客の宿泊需要も低下した。
経済を立て直す施策として、拠点性を高める新幹線の誘致が検討された。2022年に函館市長選に立候補した大泉潤氏は、新函館北斗駅から函館駅まで「ミニ新幹線」を走らせることを公約に掲げて当選を果たした。
地方都市では新幹線を建設してほしいという要望が根強いが、新たに新幹線を建設するには莫大な費用が生じるため、コストに見合う需要が見込めるか分からない。さらに新幹線を建設すれば、在来線の客を奪うことになる上、状況によっては共倒れになるリスクもある。地方都市では新幹線と在来線が並立することはオーバースペックでしかないのだ。
人口が少ない地方都市にとって、大都市とつながることができ、人や企業を呼び込める新幹線は魅力的でもある。そうした地方都市でも新幹線建設を可能にしたのがミニ新幹線という存在だった。