「やってないから」

 さて翌25日、慌てて田辺市に駆け付けた吉田氏は、昼ごろドン・ファン宅に到着した。吉田氏によると、そこから数日間、家政婦のKさんや早貴被告は警察の事情聴取を受けたという。

「Kさんと早貴被告の2人は、警察に毎日のように任意で呼ばれ、ウソ発見器にもかけられたそうです。そこで早貴は24日夕方からの自身の動きを説明できず、『ドン・ファンは大相撲を自室で見ていましたが、その途中で階下へ行ってビールを飲みました』と説明したそうですが、テーブル上には空のビール瓶は残っていなかった。彼女は普段から部屋を片付けることはしないので、これはウソだと今では思っています。いつ寝室に戻ったのかも答えることはできなかったそうです。彼女は、自分は1階のお風呂に入った、それから遺体を発見するまで2階の寝室には行っていないと言っていますが、警察が押収した彼女のスマホを解析したところ自宅内を動いて2階にも行ったことが明らかになっているそうです」(吉田氏)

 またスマホを解析した結果、事件前にインターネットで覚醒剤について検索していたこと、SNSで連絡を取った密売人と田辺市内で会ったとみられることが判明。これらを踏まえて警察は、事件当日に早貴被告が、ドン・ファンと2人きりのときに入手していた覚醒剤を飲ませたとみて逮捕に踏み切ったとされている。

 ドン・ファン殺害の動機について、吉田氏はこう推測する。

「私を田辺に呼ぶということは、私の口から早貴被告に『離婚しなさい』と言わせたかったのだと思います。ドン・ファンは相手に対し面と向かってはっきり言うことが苦手なので、その役割を私にさせようとしたでしょう。私が田辺に来ることをドン・ファンの横で聞いていた早貴被告は『殺すしかない』と思ったのではないかと思います。

 Kさんについては、私も以前から知り合いで、ドン・ファンとの関係もよく知っています。Kさんにはドン・ファンを殺す動機はあり得ません。であれば一番疑わしいのは早貴被告でしょう。警察に対して、ドン・ファンが亡くなった日の夕方の自分の行動もまともに説明できていない。そんな状況ですから『やったのなら自首したほうがいい』と彼女に言ったんですが、早貴被告は『やってないから』と一笑に付していました」

5月30日に執り行われた野崎氏の葬儀で喪主を務めた早貴被告。右となりはお手伝いのKさん(撮影:吉田 隆)