誰がドン・ファンに覚醒剤を飲ませたのか

 そんな中、5月中旬にドン・ファンが長年可愛がっていた愛犬イヴが亡くなる。深い悲しみに打ちひしがれたフォン・ファンは、愛犬のために盛大な追悼式を6月初旬、白浜の高級ホテルで催すことも決めた。その矢先にあの事件が起きた。

 ドン・ファンと親しく接していた都内在住のジャーナリストの吉田隆氏は、その直前、ドン・ファンから何度も電話を受けていた。

「会って相談したいことがあるので田辺に来て欲しい」という電話を吉田氏はたびたび受けていた。だが吉田氏は、6月1日にドン・ファンが東京・築地の聖路加病院で定期検査を受けることを聞いていたので「6月1日に都内で会いましょうよ」と応えたが「それではダメなんです。なんとか来ていただけませんか」と懇願され、5月24日の夕方、「では明日、田辺に行きます」と応じていたのだ。

 ドン・ファンは自宅2階の寝室で怪死しているのが発見されたのは、その日の晩だった。

 遺体は県内の解剖ができる病院に運ばれた。検死の結果、体内から大量の覚せい剤が検出された。何者かがドン・ファンに覚醒剤を飲ませた可能性が高まり、捜査が始まった。

 いったい誰がドン・ファンに覚醒剤を飲ませることができたのか。

 ドン・ファンは亡くなる半年前に自宅の塀を新築しているが、その際、新たに防犯カメラを8台、死角のないように設置していた。そこに記録された映像によると、家政婦のKさんが5月24日の夕方に外出し、19時半ごろに帰宅したが、それ以外に家を出入りする者はいなかったことが判明している。

 遺体が発見されたのは22時過ぎだが、そのときに家にいたのはKさんと早貴被告だけである。ドン・ファンが衝動的に覚醒剤で自殺を図った可能性は、盛大にイヴのお別れ会を開く準備をしていたこと、翌日に吉田氏と会う約束を取り付けていたことなどから考えてほぼない。他殺説はほぼ確定していると言っていい。