今回、初公判が行われる詐欺事件については、早貴被告の過去の“パパ活”の実態を調べていた捜査員は被害を受けたM氏に対し被害届を提出するよう説得し、M氏はそれに従ったということなのだろう。公判になると自分の氏名や住所が明らかになるのでM氏は被害届の提出をかなり渋ったらしい。それはともかく、早貴被告の裁判の中で、この公判を皮切りにするという検察の決定には少々クビを傾げざるを得ない。

 司法記者も言う。

「本丸の殺人罪ではない詐欺罪の裁判を最初の公判に選んだのは殺人罪での公判維持が難しいから、という印象を与えてしまっています。本丸は裁判員裁判になる予定ですが、その前に〈“パパ活”をしていたことでも分かるように早貴被告はお金持ちを平気で騙せる女性だ〉というイメージを裁判員たちに持たせたかったのではないでしょうか。本当にそうならば、本丸の裁判は難航するかも知れませんね」

異常な新婚生活

 前述のように2018年2月8日に田辺市役所に入籍届を出したドン・ファンと早貴被告だったが、早貴被告はすぐに田辺市には住もうとせず、それまで住んでいた東京・新宿のマンションの荷物を整理し、仕事もセーブするからとドン・ファンに告げ、いったん東京に戻る。ところが2月、3月と東京で暮らし、田辺に一向に戻ってくる気配のない早貴被告に対しさすがに痺れを切らしたドン・ファンは「来ないなら離婚をする」と通告する。

 慌てて戻ってきた早貴被告は、田辺市内の自動車教習所に入って普通免許を取得した。当然のことながらその費用はドン・ファンが負担していたが、その後も彼女のドン・ファンに対する対応は酷いとしか言えないものだった。

 ドン・ファン宅に家政婦として月の半分ほど住んでいた東京在住だったKさんはこう証言する。

「一緒に市内のレストランに行くときも私が運転して行くことが多かったんですが、早貴ちゃんは足の不自由なドン・ファンを車内に残したまま一人だけスタスタとレストランに入っていくんです。やっと後部座席から降りたドン・ファンの手を取ってエスコートするのは私の役割で、早貴ちゃんには愛情というのは全くなかったと思います。

 彼女は普段は無口でお世辞を言うこともなく、暇さえあれば朝から晩までゲームするためタブレットを手放さないようなゲーム依存症でした。ドン・ファンもあきれ果てていたのでしょう。家事は一切やらなくていいという契約だったようで掃除をすることもなく、洗濯をすることもありません。下着類が汚れたらゴミ箱に入れるという暮らしぶりでした。スーパーで食料品やスイーツを買ってきてもドン・ファンに勧めることもせず、自分ひとりで食べていたのにも呆れました」

野崎氏は早貴被告に「毎月100万円あげるから」と言って結婚を申し込んだという(撮影:吉田 隆)

 文字通り、「異常な」新婚生活だった。その後、GWに早貴被告は実家のある札幌に帰省する。この時も早貴被告がなかなか帰ってこないので、ドン・ファンが怒ったこともあった。