水資源問題「解決の兆しすらない」は本当か? 

 続いては南アルプストンネル建設工事中に懸念される大井川の流量減少問題だ。こちらはJR東海が大井川上流に田代ダムを保有する東京電力リニューアブルパワーの協力を取り付け、田代ダムでの取水抑制によって大井川の流量の確保が決められた。

 JR東海の提案に対し、静岡県中央新幹線対策本部長で静岡県の森貴志副知事は2023年11月29日に「工事の一定期間、発電のための取水を抑制し、大井川に還元する方策の実施の了解について(回答)」をJR東海の宇野護副社長あてに提出した。事実上の基本合意であり、今後は詳細な点や不測の事態に備えた、いわゆる詰めの協議を行うとだれもが受け止められる状況となっている。 

(図:共同通信社)
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 一方で先述の静岡県のホームページでは同様の事実が記されているものの、今後の協議事項などについては「実際の運用サイクルやオペレーション、冬期に発電所を停止する場合の対応に関する東京電力リニューアブルパワーとの協議結果は、具体的に示されていません」とか「また、リスク管理として、県外流出量と同量を取水抑制できない状態が継続する場合の対応、突発湧水など不測の事態への対応、取水抑制するための水量が不足する不確実性への対応についても対話が必要です」などと攻撃的な言葉が並ぶ。

 実はこうした文言は冒頭に挙げた川勝知事の失言よりも筆者には問題に思われる。静岡県のために尽力している県の関係者への侮辱にしか見えないからだ。
 
 川勝知事はなぜ自らリニア中央新幹線の建設工事を認可しないのであろうか。筆者の推測に過ぎないが、川勝知事は大井川の水資源問題をはじめとする諸問題はいまだに何も解決せず、また解決の兆しすらないと言い続けてきた手前、実際には国や県、JR東海の関係者の努力もあって得られた成果を、いまさら認めるのは恥だと考えたのかもしれない。

 ただし、自ら悪者となって静岡県民の利益を損ねないようにしてきた事実は明らかであるから、川勝知事をこれ以上悪く言うのはやめておこう。