スズキ・鈴木修氏とは浜松つながり
小林氏:川勝氏は知事就任前、静岡文化芸術大学の学長を務めていました。この大学は浜松市にあります。スズキの拠点も浜松市です。
特に、静岡文化芸術大学は浜松の経済界がバックアップして設立された大学でもあります。川勝知事が学長時代には、すでに良好な関係ができあがっていたのでしょう。
川勝知事は2009年に知事選に初めて出馬し、初当選しました。民主党の風が吹いていた年に、民主党の推薦を受け、自民系候補を破って当選を果たしました。民主党の政権交代を手掛けた小沢一郎さんとも、鈴木修さんは協力関係があるとされています。
その後、2期目、3期目の知事選でも、鈴木修さんは川勝知事を応援しました。一時、細野豪志さん(自民党衆院議員)が知事選に意欲を示していましたが、それを抑えたのが鈴木修さんだと言われています。
前回の4期目の時は、今回の知事選に名乗りを上げる鈴木康友さん(前浜松市長)も立候補したいと言っていましたが、それも鈴木修さんが抑えたようです。鈴木修さんは、鈴木康友さんのことも非常に応援しています。それでも、川勝知事の4選を支持したということです。
――鈴木修氏は今も静岡政界に大きな影響力を持っているのですね。
小林氏:川勝知事と鈴木修氏との関係で言えば、遠州灘沿岸に新設を計画している野球場の件でもよく見てとれます。
静岡県は東部、中部、西部という3つのブロックに分かれ、西部の中心は浜松市です。静岡県の県庁は中部にあたる静岡市にあり、県立美術館や県立大学などいろんな施設が静岡市に集まっています。
これに対し、浜松の方は自分たちが冷や飯を食わされているという感じになっている。市では長年、市営浜松球場の老朽化が課題になっていましたが、鈴木修さんはこの野球場機能を市内の遠州灘沿いに移転させ、跡地に国際規格の陸上競技場を整備したいという思いのようです。
スズキという会社も陸上競技に力を入れていますが、野球場と併設された今の陸上競技場では国際規格の大会はできません。そこで、国際大会が開ける陸上競技場を作りたいというのが鈴木修さんの夢だとされています。
遠州灘に整備する野球場は県営球場となる方向で計画が進んでいます。川勝知事もOKを出しました。ところが、遠州灘はアカウミガメの産卵地であるということで、夜間の照明や大きな音がウミガメに悪影響を与えると反対の声が上がりました。
リニア問題で南アルプスの環境保護を訴える川勝知事は、どう対応したか。野球場をドーム球場にしようという構想を打ち上げたのです。ドームであれば明かりは漏れない。「ドーム球場ならカメも守れる」と。
ドーム球場の事業費は、球場だけでも300億~400億円近くかかるでしょう。浜松市の中心部からずいぶん離れた遠州灘沿岸にドーム球場を整備して、いったい誰が使うのかということもあります。
鈴木修さんを中心に、川勝知事も前浜松市長の鈴木康友さんも非常に前向きです。このように、90歳半ばになる鈴木修さんが知事選や県政運営においてキングメーカーのようになっていることには反発もあります。
巷では、鈴木修氏とJR東海の故・葛西敬之氏(元名誉会長)との間に確執があり、川勝知事がリニア着工に抵抗しているのも、鈴木修さんの意向が働いているのではないかと言われています。この真相はわかりませんが、鈴木修氏が川勝知事に対し大きな影響力を持っていたということは事実だと思います。
(後編へ続く)