吉高由里子さんが演じる紫式部吉高由里子さんが演じる紫式部(写真:NHK公式インスタグラムより)

『源氏物語』の作者、紫式部を主人公にした『光る君へ』。NHK大河ドラマでは、初めて平安中期の貴族社会を舞台に選び、注目されている。第11回「まどう心」では、藤原兼家の陰謀によって、花山天皇が退位。一条天皇が即位すると、藤原為時は官職から外されてしまう。仕事を失った父のために、娘のまひろ(紫式部)は兼家のもとに直談判をしにいくが……。今回の見どころについて、『偉人名言迷言事典』など紫式部を取り上げた著作もある、偉人研究家の真山知幸氏が解説する。(JBpress編集部)

歴史人物たちの家族にスポットライトを当てる大河の魅力

 本連載でこれまでも書いてきたように、大河ドラマの見どころの一つは、これまであまり知られてこなかった人物にスポットライトが当てられることだ。その典型的な例が、「主要人物の家族」だろう。

 大河ドラマは1年と長期にわたって放送されるため、主要人物は幼少期から描かれて、おのずと家族が登場することになる。

 例えば、2021年放送の『青天を衝け』では、幕末から明治にかけて活躍し、「資本主義の父」と呼ばれた実業家の渋沢栄一を吉沢亮が好演。栄一の母・ゑいを和久井映見が、父の市郎右衛門を小林薫が演じた。農民の子として生まれた栄一の成長を、時には不安や戸惑いを覚えながらも、信じて見守る父母の姿が印象的だった。

 栄一は、青春時代に尊王攘夷活動に目覚めて過激活動に走りそうな時期もあった。そんな息子と激論を交わしながら「父と子でおのおの、その好きな道に従っていくのがむしろ潔いというものだ」と父が諦めるところは、実際に栄一が文献に残しているシーンであり、名場面として仕上がっている。

 今回の大河ドラマ『光る君へ』では、平安時代が舞台ということもあり、歴史人物たちの家族の存在がひときわ大きな影響力を持っている。どの家族もキャラ立ちしていて、「こんな家族の影響を受けたからこそ、こんなふうに成長して、歴史に名を刻むことになったんだな」と、主要人物の背景に説得力を持たせている。