官職を失ったまひろの父、藤原為時の今後は?
まひろ(紫式部)の場合は、母が初回で死んでしまうものの、「実は藤原道兼に殺されたのを隠して、病死とすることになった」という設定が、のちのちまで効いていて、ストーリーの軸を作っている。
そして、父の藤原為時のほうは、岸谷五朗がマジメで不器用な漢学者を巧みに演じて、娘のまひろとの関係も丁寧に描かれている。当初は、母の死の真相を隠ぺいした父に不信感を持ち、口さえ利かずに毎日を過ごしたまひろだったが、貴族社会における父の苦悩を知るうちに、内面的に成長していく。そして、今や最大のサポーターとなった。
今回の放送では、職を失った父をなんとか助けようと東奔西走するまひろの姿があった。一方、段田安則演じる藤原兼家は摂政となり、権勢をふるっていた。怖い者知らずのまひろは、会えるような身分ではないのに直談判へ。しかし、兼家からは「わしの下を去ったのは、そなたの父のほうであるぞ」として、こう言い切られてしまう。
「わしの目の黒いうちに、そなたの父が官職を得ることはない」
史実においても、為時は寛和2(986)年に花山天皇が出家したことで、官職を失ってしまい、その後、実に10年あまり官職から遠ざかることになる。父が失業したのは、紫式部が16~19歳頃のことだ。今回のドラマでは、やむなく使用人たちを解雇するシーンも描かれたが、実際の紫式部もさぞ不安に思ったことだろう。
だが、為時はこのまま沈んでいくわけではない。宮中の人事が行われる際に「受領になりたい」と希望を出し続けて、やがて叶えられることになる。職を失ってから10年後の長徳2(996)年のことである。
しばらくは元気のない為時パパを見ることになるが、歓喜の場面はどのように描かれるのか。今から楽しみである。