花山天皇を寺に連れ出し出家させた藤原道兼(写真:NHK番組公式サイトより引用)

『源氏物語』の作者、紫式部を主人公にした『光る君へ』。NHK大河ドラマでは、初めて平安中期の貴族社会を舞台に選び、注目されている。第10回「月夜の陰謀」では、花山天皇を退位させるべく、藤原兼家の陰謀がついに実行に移される。兼家と時姫の間に生まれた2番目の男子である道兼が、花山天皇を連れ出して寺に行き、出家させるというもの。道長の役割は「関白に事の次第を知らせる」という地味なものだったが、そこには兼家の思惑があり……。今回の見どころについて、『偉人名言迷言事典』など紫式部を取り上げた著作もある、偉人研究家の真山知幸氏が解説する。(JBpress編集部)

見応えがあった「寛和の変」の再現ドラマ

 歴史についての知識を得たいのであれば、数ある専門書を読み込んでいくのがよいだろう。歴史ドラマが面白いのは、歴史的な出来事をビジュアル化して再現してくれるところだ。

 今回の放送回では、花山天皇(かざんてんのう)を出家させるための計画が、ついに実行されることになった。のちに「寛和の変(かんなのへん)」と呼ばれる事件だが、その手はずが非常に見応えがあった。

 立案したのは、右大臣の藤原兼家(かねいえ)である。花山天皇さえ退位させられれば、孫で皇太子の懐仁親王(やすひとしんのう)を天皇に即位させることができる。そうなれば、自身は外祖父として権勢を振るえるというわけだ。

 兼家はすでに右大臣という位にいながらも、まだ上に関白の藤原頼忠(よりただ)や左大臣の源雅信(まさのぶ)がいた。この作戦さえ成功すれば、一気に自分が上に立つことができる。もちろん、一族の繁栄にもつながっていく。ドラマでは段田康則演じる藤原兼家が、子どもたちを呼び寄せて、この計画の重要性を強調。号令をかけるシーンがあった。

「このことが頓挫すれば、我が一族は滅びる。兄弟力を合わせて、必ず成し遂げよ」

 実行役となるのは、玉置玲央が演じる藤原道兼(みちかね)である。道兼は、兼家と時姫の間に生まれた次男だ。ここで存在感を示せば、何かと比べられる兄の道隆(みちたか)や、何かと目障りな弟の道長の一歩も二歩もリードできると考えたのだろう。ドラマでは重要な役回りに道兼が意気込む様子が見て取れた。

 たとえ花山天皇が出家するという展開をすでに知っていたとしても、ここまでドラマチックな展開として描かれると、なかなか目が離せないものである。