『源氏物語』の作者、紫式部を主人公にした『光る君へ』。NHK大河ドラマでは、初めて平安中期の貴族社会を舞台に選び、注目されている。第8話「招かれざる者」では、宮中で右大臣の藤原兼家がいきなり倒れて大騒ぎに。そんななか、まひろが母の仇である藤原道兼と予期せぬ形で遭遇することになり……。今回の見どころについて、『偉人名言迷言事典』など紫式部を取り上げた著作もある、偉人研究家の真山知幸氏が解説する。(JBpress編集部)
一族の繁栄のためには手段を選ばない藤原兼家
NHKの大河ドラマは放送が1年と長期間にわたるため、主役のみならず周辺の人物も存分に活躍させることができる。大河をきっかけに知られざる人物が注目されることも珍しくない。
今回の『光る君へ』では、藤原道長の父、段田安則演じる藤原兼家(かねいえ)の存在感が冒頭から際立っている。右大臣まで出世した兼家だったが、まだ上に左大臣と太政大臣がいた。左大臣は、益岡徹演じる源雅信(まさのぶ)で、太政大臣は橋爪淳が演じる藤原頼忠(よりただ)である。
2人を飛び越えて実権を握るには、自分の孫を天皇に即位させて、外祖父となるほかはない。幸いなことに、兼家の次女・詮子(あきこ)と円融天皇との間に懐仁(やすひと)が生まれている。孫の懐仁をいかにして天皇に即位させるか。それが兼家の一番の関心事だった。
ドラマでは、一族の繁栄のためには手段を選ばない兼家の姿が描かれている。そこまでやるかとドン引きしている視聴者もいるかもしれないが、史料では、兼家はどんな人物として描かれているのだろうか。