大河ドラマ『光る君へ』では、ユースケ・サンタマリアが演じる陰陽師・安倍晴明が、怪しげに天皇や貴族たちの間を暗躍し、権力抗争にも影響を与えている。今回は、この安倍晴明と陰陽師を取り上げたい。
文=鷹橋 忍 写真=フォトライブラリー
陰陽師とは
安倍晴明は陰陽師の代名詞のような存在だが、そもそも陰陽師とは何なのだろうか。
陰陽師は、もともとは「陰陽寮」という官司(役所)に置かれた、卜占を専門とする律令官職の名称だった。
律令制度下の陰陽寮は、以下の四部門で成り立っていた。
①卜占や土地の吉凶を占う「陰陽部門」。
②暦を作製する(造暦)「暦部門」。
③天体や気象を観測する「天文部門」。
④時刻を管理する「漏剋(ろうこく)部門」。
陰陽師は「陰陽部門」に置かれた。定員は6名である。
当初、卜占を職務としていたのは、陰陽師だけであった。
しかし、遅くとも安倍晴明が活躍する平安時代中期までに、陰陽寮に属する官人が全員、卜占を行うようになり、彼らも「陰陽師」と称されるようになったという(以上、繁田信一『安倍晴明 陰陽師たちの平安時代』)。
そして、同じく平安時代中期までに、陰陽寮の官職を辞した後も、人々から陰陽師と呼ばれ続けるようになった。
晴明も、晩年は陰陽寮官人ではなかったが、陰陽師と称されている。
また平安時代には、晴明のような官人身分の陰陽師だけでなく、民間の陰陽師も存在した。官人身分の陰陽師だけでは、陰陽師を必要とする人々の需要に応えられないからだ。
民間の陰陽師たちは僧形であることが多く、平安貴族からは「法師陰陽師」、「陰陽師法師」などと呼ばれていたという(繁田信一『呪いの都 平安京 呪詛・呪術・陰陽師』)。