町中で何人かの話を聞いたが、今から何が変わるのかピンとはこないと言う。「まさか我々が大統領を選ぶ日が来るとは」と、喜びというよりも戸惑いの表情を浮かべる人が多い。すべては今から始まるのだ。

民主主義も浸透、経済発展も遂げたが…

見慣れぬ日本人に興奮して踊りだした子供たち(写真:橋本 昇)
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 ソウェトの子供たちは、人懐こく私を取り囲み口々に話しかけてきた。ゴム跳びをする女の子たち、パチンコを持って走り回る男の子たち。あの時、「この子たちが大人になる頃、南アフリカはどんな国になっているのだろう」と子供たちの未来に思いを馳せていた。

ゴム跳びで遊ぶ子供たち(写真:橋本 昇)
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 30年が過ぎた今、南アフリカで暮らす全ての人々にはもちろん基本的人権があり、民主主義の下で経済発展も進んでいる。

 だが、失業率の高さ、経済格差の広がりという問題は、他の多くの国々と同様に南アフリカでも深刻な最重要課題だという。これから南アフリカはどう進んでいくのだろうか。

「Better Life for All!!」。ネルソン・マンデラの振り上げた拳を思い出す。

*前編はこちら

【橋本昇】
30年にわたり、フランスの写真通信社sygma(現在はgetty images)の契約フォトグラファーとして、国内の被災地や海外の内戦、難民を取材。著書に『内戦の地に生きる―フォトグラファーが見た「いのち」』(岩波ジュニア新書)がある。

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