このテロでは9人の犠牲者が貴重な命を落とした。犠牲者の中には若い白人女性もいた。スーザン・キーンというその女性は、南アフリカ生まれのアフリカーナー(南アフリカの初代白人であるボーア人の子孫)だが、黒人活動家と共に熱心に差別撤廃運動に取り組んでいた。

 彼女の死は黒人たちにも大きな悲しみを与えた。葬儀には大勢の黒人も参列し、棺の後ろに続いて墓地まで長い列を作った。彼らの歌声が空に昇っていった。

白人極右組織による爆弾テロで死亡したスーザンさんの葬儀(写真:橋本 昇)
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白人もまた暴走

 テロの実行犯だと言われる白人極右組織の事務所を訪ねてみた。事務所はヨハネスブルクから150キロ離れた町にある。タクシーに乗ってその事務所に着いたとたん、私を乗せてきた黒人ドライバーは、恐怖で顔を引きつらせながら一目散に逃げて行った。

 砂袋が積まれた事務所から3人の男が出て来た。腹の肉の間に拳銃を食い込ませている。

「なんだ、イエローか!! 喋ることなんて何もない。さっさと帰れ!! マンデラにおべんちゃらを使うクズどもには死んでもらうだけさ」

ヨハネスブルク郊外にある白人極右組織。銃で武装していた(写真:橋本 昇)
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 隣のパン屋から何事かと飛び出してきた数人の男たちの手にも拳銃が握られていた。まともに話ができる相手ではない。