脳の若返りにつながる日常の新しい刺激
自身に病気が見つかった時も、積極的治療を選んで完治させました。
私の飼い犬の世話まで率先してやるようになりました。犬の散歩で外出することが増え、人との交流も増えるようになったのです。
父は今、92歳になりました。すっかり元気を取り戻し、自宅で元気に一人暮らしをしています。脳はいくつになっても若返る。そのことを父は教えてくれました。
もう一つ、勇気づけられる実例を紹介します。高齢になり、脳が老化していてもアルツハイマー型認知症を発症しなかった修道女たちの研究です。
1986年、678人の修道女たちが協力するアルツハイマー型認知症の研究「ナン・スタディ」が始まりました。
この研究で、修道女たちの死後に脳を解剖したところ、アルツハイマーに特有の病理学的所見が見られたにもかかわらず、認知症を発症することなく、亡くなるまで修道女の役割を果たしてきたことがわかりました。
修道女は毎日規則正しく、自分の役割を見出しながら働き続けている人たちです。自分のするべきことがあり、自分にしか果たせない役割があることが脳の機能を維持するのにどれほど大事かということをナン・スタディの結果は私たちに教えてくれているように思います。
つまり、日常生活の中に新しい刺激があれば、何歳になっても脳を若返らせることはできるのです。
そこでおすすめしたいのは、脳に刺激を与えるような生活習慣を心がけ、余裕があればちょっとしたトレーニングをすること。中でも、手や指を動かすことは脳に刺激を与える方法として有効です。
カナダの脳神経外科医であるワイルダー・ペンフィールドは、私たちの脳の中にはグロテスクな小人「ホムンクルス」が住んでいると言っていました。
ホムンクルスは、古代ヨーロッパの錬金術でつくられる小人のことです。ペンフィールドはてんかん患者のてんかんを軽くする脳の手術を行う際、人の大脳皮質を電気で刺激し、運動機能に関わる部位や感覚に関する体の部位との対比関係をまとめました。それを図示したのがホムンクルスの図です。
この図はfMRI(磁気共鳴機能画像法)を用いた研究の結果、2022年に新しくなりました。次ページの図はその最新版です。